第6章 彼女
桃井「また夫婦喧嘩…」
青子が言い返していると廊下の方から視線を感じ、そちらを見ると一ノ瀬さんが覗き込んでこちらを見つめていた。目が合うと手招きをして俺の事を呼んでいる
『俺トイレ行ってくるわ〜』
それだけを言い残して教室を出た
『俺の事手招きしてどうしたの、お姉さん?』
一ノ瀬「屋上に行きたいんだけどドアって開いてるかな?」
『おう、開いてるぜ』
一ノ瀬「ありがとう、黒羽くん
青子ちゃん達と話してたのにごめんね」
『ぜんぜーん!』
一ノ瀬「黒羽くんも一緒に屋上行く?」
少し不安げな顔で聞いてくる
『いいぜぇ、俺もお姉さんと屋上行くよ』
不安そうだった顔が笑顔になる。その笑顔が子供っぽくて可愛いらしかった。彼女は階段を元気に駆け上がっていき屋上のドアを開けると眩しかったのか手を顔の上で翳している。
『お姉さん屋上になんの用?』
一ノ瀬「タバコ吸いに来たんだよ」
『お姉さんがタバコ吸うなんて意外だな』
意外かな?と言いながら頭を傾げながらタバコに火を付け始め白い煙が漂う
『てかよー?屋上でタバコなんて吸ってていいのかよ』
一ノ瀬「休憩中だし、ここには黒羽くんしかいないから2人だけの秘密ね。はい、指切りげんまん」
『お姉さんでも指切りげんまん何てすんだな!』
差し出してきた小指に自分の小指を絡めて、指切りげんまんをする。唐突に俺の手を見ながら綺麗と言い出した
『俺マジックするから手は綺麗にしてんだよ』
一ノ瀬「黒羽くんも意外な所あるんだね
マジック少し見せてくれたりする?」
『いいぜ!』
興味津々に俺の手元を凝視している。まるでマジックを見るのが楽しみで仕方ない子供だ。ハンカチを取り花が現れるとすごいと褒めてくれた
『これお姉さんにやるよ』
一ノ瀬「花を渡すなんて紳士ね」
タバコの火を消して持っていた灰皿に入れ花を大事そうに受け取る
一ノ瀬「大事にするね」
今の笑った顔すげぇ可愛い。
一ノ瀬「私と一緒に教室戻ったら青子ちゃん達に変に思われちゃうから先に戻りな?」
『そうだな、トイレって言ってあるし…それじゃ教室でな、お姉さん』
お姉さんに背中を向けて先に出ていこうとすると名前を呼ばれ引き止められる
『どうした?』