第5章 ただいま。
結界。
最初こそ不安定なものだったけれと、この1年でだいぶ使いこなせるようになってきた。
結界を張る範囲によって呪力量を変え、対象範囲が狭ければ消費は少なくて済むし、逆に広ければそれだけ消費は激しく、そう長くはもたない。
閉じ込める結界と他者の侵入を拒む結界。
今、目の前の彼に張った結界は閉じ込める結界だ。
『よし、ひとまずこれで安心、、っ⁈⁈』
突如呪霊の気配を感じ、全身の毛が逆立った。
「ウフフ、アーソーボ⁇」
背後から子供のような声が聞こえ、私は畳を蹴り飛び退いた。
心臓がばくばくと音を立てる中、視線の先にいたのは、、、
人間の子供に近い姿をした呪霊がこちらを見て笑っていた。
「ウフフフ、鬼ゴッコ?」
赤い着物を身につけ、頭が異様に大きく、真っ白いその顔にはギョロギョロと妖しく光る目がいくつもついている。
ゴクリ…と唾を飲み、ジリジリと間合いを取る。
さっきまで気配なんて感じ無かったのに、、どこから現れた?
それにこの感じ、、恵君が追った呪霊とは別のものだ。
私達は勘違いしていたのかもしれない、、
そもそも呪霊は2体いたんだ…。
しかも生徒を操っていたのは、、、
『えっーー?』
突然、呪霊が消えた。
気配を探るため、意識を集中させるていると、
「バアッ‼︎」
私の真下、畳から顔を出した。
『なっ、、、⁈』
反転術式を流そうと手を伸ばすが、またしても消えてしまう。
瞬間移動⁈しかも地面や壁もすり抜けてる‼︎
対象に触れなければ術式を流す事は出来ないし、瞬間移動が出来るとなると結界に閉じ込めても意味がない。
ーーー私との相性は最悪…。
嫌な汗が背中を伝う。
どうする?どうしたら祓える…?
頭をフル回転させている間も、呪霊はケタケタと笑いながら目の前に現れたり消えたりを繰り返している。
完全に遊ばれてる、、‼︎
・・ちょっと待って…何か違和感を感じる。
この呪霊、消えては現れを繰り返してるけど、私に一度も攻撃してきてない⁇
「コッチダヨーーーー」
天井から顔を出した呪霊は長い舌をペロリと出した。
もしかして…。
一つの考えが頭に浮かび、私は足に呪力を纏わせた。
『いーよ…しようか?ーーー鬼ごっこ。』
「ウフフ、ニゲローーー‼︎」
そこから私と呪霊の鬼ごっこが始まった。