第5章 ただいま。
精神統一でもしてるのだろうか…
邪魔しちゃ悪いけど、今はそんな事を言ってる場合じゃない。
呪霊が現れたのだ。
座ったまま動こうとしない彼の側まで近づきもう一度、声を掛けようとした時、
突然スッと立ち上がった。
『び、、びっくりした、、、』
その表情は影が差し、無表情で私を見下ろしている。
目の前に立たれるとその大きな身体はまるで壁のようで、思わず一歩後退りする。
『わ、私は呪術高専の者です…。学校から話があったと思いますが、今ここは危険ですので、一緒に、、、ッ⁈』
バタンッ
一瞬にして世界が反転した。
『〜〜っ、、、』
気づいた時には背中を強く打ち付け、天井を仰いでいた。
あまりの速さに受け身を取る間もなく、綺麗な一本背負いをされたのだ。
ーーーー今、、私、、投げられた⁇⁇
じんじんと痛む背中に顔を引き攣らせながら上体を起こす。
やっぱり様子がおかしい…
私を投げた後も彼は相変わらず無表情で目は虚ろとしている。
ーーーもしかして、何かに取り憑かれてる⁈
ゆらゆらと再び近づいて来る彼に、私は慌てて間合いを取る。
『・・もう一度言います…。
ここは危険ですので私と外へ行きましょう。』
しかし、私の言葉は彼の耳には届かなかない。
「ゔゔーーーー」
低い声で唸り、距離を詰めて来た。
私は視線はそのままに、ジリジリと後ろへ下がる。
ーーーどうする?
彼は取り憑かれてるだけでただの学生…
恵君が呪霊を祓ったらきっと彼は正気に戻るはず。
なら、それまで彼を外に出さずここで拘束するのが一番良い。
そう思い、私は畳に手を付き呪力を流した。
次の瞬間、彼の周りをポゥッと青白い光が包み、結界に閉じ込める事が出来た。