第5章 ただいま。
「ーーーー行きますよ⁈」
恵君は踵を返し、校舎の方へ走り出そうとした時、地面が揺れる程の大きな呻き声が聴こえてきた。
ゔゔあ"ア"ァ"ァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼︎‼︎
「ッ⁈」
『、、、すごい声っ、、』
呪力で鼓膜をカバーしていても耳をつん裂くような声に堪らず耳を塞いだ。
資料によると呪霊はおそらく2級。
恵君ならきっとーーーー大丈夫。
『恵君っ!説教は後でちゃんと受けるから!
呪霊の討伐、お願いしますっ!』
「はっ⁉︎」
怒気を含んだ恵君の声に後ろめたさを感じながらも、私は校舎とは反対方向の武道場へと駆け出した。
どうしてもさっき感じた人の気配が気になってしょうがなかった。
武道場の中にまだ誰か残ってるかもしれない…
見つけたら安全な場所へ退避してもらい、その後恵君と合流しよう…。
頭の中で算段を立て、武道場の前へ着くと重い扉をゆっくりと開けた。
『ーーー⁈』
しん…と静寂に包まれる中、ポツンと1人、畳敷の床に胡座を掻いて座っている人物がいた。
『あ、あのっ、、、すいません!』
その柔道着を着た大柄の男の子は、私に気づいていないようで、じっと一点を見つめたまま動かない。