第2章 に
「え、まって、え??」
運命の相手を望んだのは私だ。
解けたと思った糸が、蘇る。
なんていうか、透明な繊維が赤く染まってくようだ。
ゆっくりとじんわりと色が戻ってくるような、そんな感覚だ。
「どういうこと、」
あの胡散臭い占い師にだって、
『運命の相手、いないみたいね』
なんて、ハッキリ言われたし。
というか、今更だし…って。
他になんて言ってたっけ??
冷や汗が伝う。
前もこんなこと、あった気がする。
"それから、観覧車には気をつけなさい"
「観覧車に、気をつけなさい」
私に視えるのは、ただの糸だ。
人を結びつけるための、糸。
未来なんてわかるはずもないし、あんな忠告の意味だって計り知れないし、どうなるの、コレ。
心臓がバクバクと音を立て始める。
そして、
その糸の色が完全に赤になったのは、頂上付近に近づいた時。
たしか、あの事件の時もこの辺りで爆発したんじゃなかったっけ。
まさか、最後にいい夢を見せてくれる的なそういうので、実はこのゴンドラにも爆弾が仕掛けられているとか??
そういうこと??
怖くなって俯いてぎゅっと目を瞑った。
…その瞬間タバコの匂いがした。
「あ?なんだ、お前。」
聞いたことあるような、ないような低くドスの聞いた声。
なんでいるの、どこから来たの。
いつからいたの??
声にできない。
「おい、大丈夫か?」
こんな展開おかしすぎるでしょ、誰なのいったい。
世間を騒がせてるキッドとかなの??
それなら大丈夫そ??
そんなわけなくない??
キッドでも回ってる観覧車途中乗車はむりくない??
などと、冷静に思ってる暇はない。
正直言って、ガチで怖い。
だって乗る時どう考えてもやっぱり、一人だったじゃん、
隠れるとこもなければ、誰もいなかったじゃん。
いや、まてまて一周回ってとりあえず現状確認はしないとじゃん。
この声の主と、あとせっかく戻った糸の確認もしたいところではあるし、目を開けないことにはどうにもならんし。
恐る恐る、目をあける。
やっぱり赤い糸、戻ってる。
糸の確認OK、それから、同乗者の確認をしないと。
ゆっくりと視線を上げていく。
黒い革靴、それから、スーツ。