第2章 に
まだ、自我が芽生えて間もない頃。
記憶の1番奥の方にある思い出。
…そんな幼い時に、父と母の小指に巻き付いた赤い糸を解こうとしたことがある。
強く結びついたそれが、痛そうに見えたからだ。
どうにかしたいが解けないそれに、いっそのこと自分たちで解いてもらった方が良いのでは?と、両親に告げた私。
何を言っているの?と言っていた母の気持ちを今ならわかる。
そんなもの人には視えないからだ。
だから、糸ではないならコレは何かと聞けば、両親ははて?と首を傾げて、そんなものはないと言った。
その糸は両親だけではなく、みんなに巻きついていて。
誰に聞いても、視えない糸についてわかるはずもなかった。
…少し歳を重ねてようやく私の目が特異なんだと気付いた。
それからはその糸の話をすることは無くなっていたんだけど…
それが俗に言う、運命の赤い糸だと言うことを知ったのは、当時ませていた友達に見せてもらった少女漫画がきっかけだった。
そして、自分の指にも絡まるこの糸の先に、きっと運命の人がいると言うことも、なんとなくそこで理解した。
どんな人がその先にいるのか、昔は胸を躍らせてた。
両親が亡くなるのと同時期にこの糸が消え、次第に周りから人も去っていくまでは。
それからはたまた数年。
やっぱり、運命と出会えないまま終わるのか…。
あの本屋も潰れた今、生き甲斐もなしにどう過ごしていけば良いんだろう。
そんなことを思ってボーっと歩いていたら、ハイドショッピングモールまで来てしまったわけだが。
そういえば、2〜3年前にこの大きい観覧車爆発したんだっけ。
当時ニュースになっていたのを思い出し、ブルッと身をゆする。
賑わう人たちを見ながら羨ましいと思う反面、当時あんな事件を起こした、そんな過激派にだって運命の相手はいるんだと少し悔しくなった。
結ばれるかは別としても、相手がいるって分かればせめてこんな私の人生にだって希望も持てたのに。
「一名様ですか?」
「はい」
「足元お気をつけください」
「はい、ん?」
意図せず、観覧車に乗るための列に並んでいたらしい。綺麗なお姉さんに誘導されてゴンドラに乗る。
一人で観覧車って…。
そう思ってるうちに、小指にピリっと静電気のような痛みが走る。
「ッ」