第9章 きゅう
「オレたちほどの被害じゃ無くて、割とすぐ復帰したんだ」
耳を疑いたくなる。
「今じゃ、ゼロの同期で生きてるのは伊達班長だけ。萩原もオレも松田も、今はゼロの協力者って事になってる」
「…」
「目が覚めたのは、班長を抜かして…オレ、萩原、松田の順」
穏やかな声と裏腹に重い話で、そろそろ胃もたれしそうだ。
「言ってもオレは、自分で引き金を引いて、運良く心臓をズレて処置も割と素早くしてもらえたんだ。
身分を偽ってるのも、上云々じゃ無く、潜入先からバレない為だし、ある意味オレも別枠なんだけど」
「…」
「…ごめんね、こんな話」
「いや、事情わかって助かった。…そーか、そう言う扱いなんだな、俺たち」
「でも、ゼロが動いてくれてるから。今回の任務で結果を出せば、あるいは!!」
「ありがとな」
「え…あ、いや、オレは何も」
「つい最近まで、幽霊だと思ってたんだ。
初めて目が覚めた時、体の重さにびっくりした。
ははっ、まぁ、なんつーか、生きてるって実感したんだ」
諸伏が苦虫を潰したような、渋い顔をするから、なんだか笑ってしまう。
「生きてただけで、ありがてぇよ。…つってな。まぁ、なんだ、助けてもらった恩、無駄にしねぇように暴れてやるよ」
「その前にリハビリだね」
「これでも、回復力えげつないって褒められたんだけどな」
「現役の松田に比べたら、まだまだでしょ」
「痛いとこ突いてきやがる」
「オレも、ちょくちょく顔出すようにするから」
「サンキューな」
こんな真っ白い部屋の中じゃ、1人でいたら息が詰まる。
不自由な身体に、嫌気がさす。
…せっかく、戻れたっつーのに。
けど、まだ諦めないでいられるのは、こうして冷やかし?…否、励ましにきてくれる仲間がいるから。
あと、なまえも1人にしておけねぇし。
ほんと、早くもどさねぇと。
……ゼロに譲れねぇし。