第2章 に
「運命の相手、いないみたいね」
…わかってたことじゃないか。
「それから、観覧車には気をつけなさい」
「どういうことですか?」
「私に見えたのはそこまでよ。それから本はね、工藤さんが引き取ったらしいわ」
「工藤さん?」
「知らないかしら?工藤優作」
「ナイトバロンシリーズの?!」
「そうよ、」
じゃあ、もうほんとに読めないじゃないか。
工藤さんと知り合いにならない限り。
「…占い、いくらですか」
「今日はサービスでいいわよ」
「そういうわけにもいきませんから」
胡散臭さはあったものの、少しだけ興味のあることを言われたから。
プレートに書かれた【手相、3,000円〜】という字を見て、最低価格かもしれないけど、と、3千円をテーブルに置いた。
「少ないかもしれませんが。…では、失礼します」
本の行方もわかったし、それから、運命についても確信がもてた。
占ってもらうつもりはなかったけど、"同じような見解"で、スッキリした。
引き止められるままなく、スタスタとその場所から去る。
観覧車というワードはすっかり忘れて、そっと手を翳す。
「やっぱりな…」
…子供は、不思議なものが見えるらしい。
妖精然り、すすわたりの類だって。
だから、私のこの目も大人になれば変わるんだってどこかで思っていた。
わたしは、昔から"運命の赤い糸"が視える。
それは、大人になった今も変わらず。
人には必ず運命の人がいる。
小指同士に巻き付いたその糸は、空を漂い人と人を繋いでいる。
もちろん、運命だからって必ずしも付き合って添い遂げられるかといわれたら、別だが。
糸が繋がってない同士で結ばれた場合、反発し合うか絡まるかで上手くいかないことが多いし、異性じゃなくて同性を結び合わせる糸もあった。
その糸は老若男女誰でもついていて、例外なくさっきの占い師にも本屋の店主にもついていた。
だけど、さっきの占い師が言うように、
私の小指にそれはない。
…昔、解けてしまったのだ。
「ふ、」
わかってはいたけど、現実を突きつけられるとくるものがある。
思えば、私の糸が解けてからだ。
この世界との結びつきが弱くなったような気がしたのは。
だから余計、物語の奥に行きたいって思うようになったのだ。