第9章 きゅう
リハビリをしたおかげで体力や筋力が戻ってきてるとは言え、上手く立ち上がることすらできない自分に苛立つ。
「どうしたんだよ、急に」
「情けねぇ」
「大丈夫?」
「ッチ、…んぁ"〜っ、クソ!!」
ガシガシと頭をかいて、動けと太ももを叩いて足に気合をいれてもやはり、うまくいかない。
「…萩、」
「何?」
「俺の世話になった奴、…なまえって言うんだけどよ」
「なまえちゃん?」
「多分、…今1人なんだ。可愛げもねぇガキだけど、俺の恩人で、アイツがいたから少しの間だったけど、楽しいって思えたんだよ。
恩返しがしてぇって思ったのに、何にもできずに戻ってきちまった」
ズキズキと頭痛がし始める。
「俺、アイツとどうやって別れたのか、その辺の記憶無くてさ…だから、もしかして泣いてるかもしれねぇ」
「陣平ちゃんが居ないと、泣くの?…その子」
「前も同じようなことあったんだ。俺、その時何にもできなくてよ、でも、もう泣かせたくないって思ったんだよ。
護りたいって、思ったんだよ」
「…」
「頼みがある、お前にしか頼めない」
「内容にもよるかな」
「俺が回復するまで、…」
「そばにいてやって、って?」
一つうなづけば良いはずなのに、うなづくことができない。
「降谷もその子と知り合いなんでしょ?」
「ゼロはダメだ!!」
「どうして??」
「だって!ゼロは!!…アイツは、…金髪で、蒼眼で…アムロ…って、とにかくダメなんだよ!わかれよ」
「わかんねぇなぁ」
「あ、いや、でも…ゼロにも頼んだ?…どっちにしろ、ゼロの監視役でついててやってくれ!
ついでに、コレも」
「ん?」
先日、ゼロに俺の部屋から持ってきてもらった、いつも俺が愛用していた香水を萩に押し付ける。
「なに、くれんの?」
「ちげぇよ、なまえに」
「!」
「なんだよ、その顔」
「へぇ………。いや。わかった。いいよ、陣平ちゃん」
クスッと笑った萩がそん時何を企んだかしらねぇけど。
でも、コイツなまえのタイプの外見ではないし、気はあっても俺と真逆の性格だし、アムロよりは靡かねぇかなって。