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無色透明な赤い糸       【DC】【松田】

第9章 きゅう  


 動く気配で起きねぇとか、どんだけ弛んでるんだよ。

 …って、

 いや、疲れてるだけか。
 眠り過ぎたせいで、やけに目が冴える。

 筋力が落ちたせいか、全然体うごかねぇ。

 なんて思っていると、金が揺れた。

 「…っ!!…ふっ、おはよう」

 冷静さを保とうとしてんだろうけど、バッチリ間抜けづら見ちまったからさ。

 いつか、笑い話にしてやる。

 なんとか首を動かす。

 「声、出ないのか?って、待ってろ、今医者呼んでくる」

 立ち上がったそいつを視線だけ追って、また目を閉じた。












ーーーーーー
ーーー











 俺が次目を覚ましたのは、太陽がてっぺんまで回った頃。

 シャラっと髪をすくような、そんな感覚を受けたから。

 「ん…」
 「おはよう、眠り姫」
 「!?」

 これでもかってほど、目を疑う。

 起きたと思いきや、俺やっぱしん………ん?


 「萩原、そこまでにしとけ」
 「そーだよ、せっかく起きたのに心臓が止まったら困るよ」
 「えー。いーじゃん。俺と陣平ちゃんの仲なんだから〜久しぶりに会いたかったよ、相棒」


 嘘だろって、

 だって俺あの時…。


 「いやー、にしても俺たち凄くない?奇跡の生還だよ!全く、持つべきものは、できる同期ってかぁ」

 …萩。

 「まぁ、ゼロだからね」

 …諸伏。

 「ちゃかすなよ、ヒロ。…やっと、揃ったな」

 …降谷。

 「まぁ、松田はここから大変だけどな」

 …班長。
 じんわりと、目が潤む。

 「俺がしっかり支えるからね、陣平ちゃん」

 声が出ないのが悔しい。
 あん時はよくも、って、言ってやりたいのに。

 「って、みんな。そろそろ時間だ、松田がんばれよ」

 班長がわしゃわしゃと頭を撫でてくる。
 やめろって言いたいのに、やけに落ち着く。

 「松田。これから精密検査とか、リハビリとか色々あるけど諦めるなよ」

 上等だよ、ゼロ。
 …せっかく地獄の淵から戻ってきたんだからな。

 コクッとうなづく。

 やってやる。
 やらなきゃなんねぇこと、山ほどあるんだから。

 アイツらと入れ違いで、医者やら看護師やらが入ってくる。
 俺の今の状況と、これまでのことこれからのこと、そんなに一気に言われてもっていう情報量が一気に頭を巡る。
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