第2章 に
いつからだろう、自分の目の特異さゆえに心が荒んでいくような気持ちがしてきたのは。
なんて、悲壮感に浸りたくなるのは、お気に入りだった本屋がついにシャッターを下ろしたからだ。
私が通うようになって以来一度も休業したことのなかったここが、数年前に数日間休業してから度々シャッターを閉めることはあったが、まさか、本格的に閉店だなんて。
…って、本格的に閉店ってなんだ。
絶望感でしかない。
閉店するなら前もっていってくれれば、買い残した本たち全部買い占めたかったのに。
あの本たちは、いったいどこに行ってしまったんだろう。
「はぁ……」
「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん」
ついてないと思いながら歩いていると、道端でいかにもな佇まいの占い師に声をかけられた。
今時いるの?そういう人。
「やっていかない?安くするわよ」
「間に合ってるので、大丈夫です」
「良いから良いから、見てあげるわよ」
本も買えず、変な人に話しかけられ、とんだ休日だ。
「落ち込んでるんでしょう、そうね、あなたの年頃なら恋とかかしら?」
「いえ、通っていた本屋が閉まってしまって落ち込んでるだけです」
「…あぁ、店主さん体弱ってたみたいだものね。私もよく通ってたわ。珍しい本とかもたくさんあったのに残念よね」
会話するつもりなんて始めはなかったのに、その言葉に釣られて足を止めてしまう。
「そう!!そうなんですよ!!あの本達、どうなったんだろうって、」
「しってるわよ」
「え?どうなったんですか?」
「…」
試すような視線に、一つため息をついて結局その占い師に促されるままに、丸椅子へと座る。
屋台のラーメン屋さんとかで見るような、背もたれのない椅子だった。
「占うついでに教えてあげるわ」
「占いは本当に結構です、」
「手相から見るわね」
強引に手を取られ、小指に触れられた時ビクッと身体が跳ねた。
「ねぇ、知ってるかしら?
人には必ず運命の人というものが存在しているのよ」
「わたしには、いませんよ」
「いるのよ。
…だから、結婚というものをできない人はいないのよ」
分かったように言われるのも、こんなふうに手を触られるのも不快だ。
「…なにが、」
「だけど、珍しいわ。…あなたは違うみたいね」