第8章 はち
「なんでよ、会わせてよ」
別に会わなくてもいいけど。
「むり、絶対やだ。死んでも無理」
拒否されると気になっちゃうじゃん。
「松田さんのけち」
松田さんの同期だし。
「けち言うな」
そういえば、あのお世話がかりのひとも同期だっけ?
同僚だったっけ??
「まぁまぁ。松田の気持ちもわかってやってくださいよ、なまえさん。同期であれ、君が他の男に靡く可能性を少しでも減らしたいんですよ。松田は同期きっての傍若無人ですから」
美人だったな。
「勝手なこと言うなよ、どっちが傍若無人だよ。こいつはあれだぞ、アムロって言う優男の仮面被ってるだけだからな。
本当の降谷は傍若無人どこらの騒ぎじゃねぇし、クソドSクソやろうだからな?」
「松田?」
やっぱり、類友では?
顔も良くて、頭も良くて、性格も良くて………って、私負け確では?
「ッチ、」
いや、松田サンを観覧車から救い出したの私だし。
「ところでなまえさん?」
私の方が、一歩リードだし。
赤い糸の先、繋がってるのは私だし。
自然と目がいった小指の先。
…って、そうじゃん。
もう繋がってないんじゃん。
あれ?
じゃあ、なんで私といてくれてるんだろう?
私憎まれ口しか叩けないのに。
って、なにネガティブスイッチ自分で入れてるんだ。
ダメダメ、考えるのやめた。
松田サンの同期も同僚もやっぱり会わなくて良いし、知らなくて良い。
金髪蒼眼じゃなくてもなんでもいいから、松田サンがこうしていてくれるだけで良いんだから。
大事なのは、今なんだから。
だから、離れて行かないように、憎まれ口叩きすぎないように気をつけよう。
可愛げ出したいし。
可愛いって、思われたい…わけではなくないし。
って、どっちやねん。
勢い余ってノリツッコミしちゃったわ。
「…と言うことなんですけど」
「え、あ!はい!」
「聞いてました?」
「もちろんですとも!」
って、…聞いてなかった。
反射的に返事しちゃったけど、全然聞いてなかった!
「嘘つけ」
松田サンにバレバレなの、なんでなの!
「う、嘘じゃないし!」
慌てて誤魔化す。
でもきっと、安室ママのことだから夕飯なににする?って話だと思う(偏見)。