第8章 はち
「迎えに来ましたよ、なまえさん」
白い車によりかかり、金髪蒼眼のすらっとしたビジュアルの安室さんが立っていた。
絵になるのよ、これが。
安室さんが色白だったら、色々やばかったに違いない。
いや、逆に、安室さんだから地黒でもかっこいい。
むしろ安室さんしか勝たん。
…。
ちょろくね?私、めちゃくちゃちょろくね?
「ありがとうございます、安室さん」
どーぞ、と、ドアを開けて頭が当たらないよう天井部分を抑えくれる。
エスコート、かっこよすぎるな?
「いいえ」
ニッコリとはにかまれてしまっては、もう私勝てないて。
「おい」
パタンとドアが閉まる。
「お〜い」
「…なに、松田サン」
「なに?じゃねーんだわ。ずっといんだわ。お前、アムロにコロッといってんじゃねぇ」
「逆に言うけど、安室さんにコロッていかない女子を女子とは認めん」
「はは」
ガチャッとシートベルトをはめる音がする。
「アムロのその勝ち誇った顔が腹立つ。っつーか、俺はお前を女子とは認めん」
「そんなこと言って良いのか、松田」
「そうだぞ、松田」
「松田"サン"な。ったく、ほんと可愛げがねぇ」
ミラー越しに、不貞腐れたように行儀悪く座る松田サンが見える。
「松田サンは、可愛いよね」
「っは?!」
「よかったな、松田」
「嬉しくねぇ」
助手席じゃなくて、後部座席座ればよかったな…なんて、絶対言わないけど。
なにも知らないまま出会っていたら、松田サンより安室さんを選んでいたかもしれないけど。
…いや、松田サンもイケメンなんだった。
待ってくれ、私ってばメンクイなのか?
確かにラーメンは好きだけど。
「類は友を呼ぶって言うじゃないですか?」
「どうした、急に」
「松田さんって、基本傍若無人じゃないですか」
「あぁ?」
「でも、実はイケメンじゃないですか」
「…」
「安室さんは言わずもがなイケメンじゃないですか」
「ありがとうございます」
「ということは、お二人の同期もさぞかしイケメンでいらっしゃると言う解釈でお間違いないでしょうか?」
「うーん…どうでしょうね」
困ったような顔をする安室さん。
「イケメンであろうがなかろうが、絶対お前には会わせねぇよ」