第7章 なな
「今日こそ、今日こそ絶対だからな」
松田サンと買いに行く約束をした漫画本は結局あれから買いにいけてない。
J Dは忙しいのだ。
「こら、松田。なまえさんだって忙しいんだからな。今日は松田のこと借りるけど、君が終わるくらいにはなるべく間に合うようにするから」
「お構いなく。私は、松田サンと出会ってからずっと独り占めしちゃってたようなものなので」
困ったように安室さんが笑う。
仕事はどうしてるんだろうとは思うが、あの日から安室さんまで居候になった。
気付いたら家事のほとんどを安室さんがしてくれて、安室さんって本当にママ?ってなっている。
そのお陰で私の体調も、無事万全に完璧に回復して。
今日は久々の大学。
久々でもないんだけど。
少し休むとずっと行ってなかったような感覚になるから、不思議だ。
熱を出して治ってからというもの、どこかすっきりとした気持ちがする。
安室さんの回復飯のおかげかもしれない。
つきものがとれたような感覚。
あれ、もしかして松田サンがついてたから不調だったのでは?
なぁんて、本人言ったらすごく怒りそうだから言わないけど。
「失礼なこと考えてただろ」
「べつに?」
「嘘つけ、お前顔に全部書いてあるんだよ!」
ぐしゃぐしゃと頭をボサボサにされる。
「わ、ちょ!」
ベシッと私の代わりに制裁をしてくれたのは、やっぱり安室さん。
私の部屋のものを介してなら、松田サンに触れるとわかってからは武器で応対している。
そのうち、松田サン物理的に成仏しそうで怖い。
「オイ、出がけにそんなことしたらなまえさんが困るだろ」
「このぐらいがいいんだよ。あんまりめかしこんで、変な虫につかれたら困るだろうが」
「こっちにおいで、なまえさん」
櫛を持って、整えてくれる安室さん。
間違えたアムロママ。
ありがとう、アムロママ。
「デレデレしやがって気持ちわりぃ」
「しょうがないじゃんか。安室さんイケメンなんだから」
「俺もイケメンだろうが」
「ほら、そろそろ出ないと間に合いませんよ」
「ママぁっ」
「はは。さ、お弁当は持ちましたか?」