第6章 ろく
頭の上の方で2人が言い合うのを聞きいていた。
それでも
腰のあたりを一定のリズムで多分安室さんが優しく私をぽんぽんとするから、お腹いっぱいなのも相まって眠くなってくる。
あったかいのは、2人がそばにいるからか…。
ーーーーー
ーー
夢を見た。
遠い昔の記憶だ。
両親がいた頃の記憶。
深い奥に追いやって、忘れようとしていた記憶。
嫌な思い出じゃ無い。
大好きな、
大切な思い出だったから、
思い出して仕舞えばそれに縋りたくなるのはわかってたから、
忘れようと蓋をしていた。
当時父と母は学生で、
母は私を産むために療養のために休学と誤魔化して出産したらしい。
若かった2人、
それでなくても童顔だった2人は、親じゃなくて私の兄弟と間違われることもあったと言っていた。
周りの子に若くて優しくていいな、と褒められるたびに私は何処か優越感に浸ってた。
『パパ、ママ』
お休みの日いつもの如く、私よりも先に起きて2人でキッチンに立つ姿は羨ましいくらい幸せそうだった。
たまにこっそり、部屋のドアを開けて覗いてた。
清くて、優しい空気感だった。
『おはよう、なまえ』
私にいち早く気づいたパパが、手を拭いて近寄ってくる。
ゆっくりと抱き上げて、パパの視線と同じ高さになる。
『おはよう、よく眠れた?』
ママのそばまでそのまま抱っこで運んでんでくれる。
ママも私を見てにっこりと笑う。
『おはようママ、いっぱい寝れた!』
そういうと、安心したように笑ってぽんぽんと頭を撫でる。
まだ沸騰しない鍋の横には豆腐となめこが用意されていて
それだけで私の大好きな具の入った味噌汁が出来上がるんだとワクワクしていた。
『なまえの好きなお味噌汁作ってたから、出来上がったら食べようね?』
「うん!!手伝う!!」
幼いながらに、キッチンに立とうとする私は2人と一緒にいる時間を、もっと増やしたかったからかも知れない。
若いからこそ、私が苦労しないようにたくさんお仕事をしていてくれた2人。
あの家だって、両親が苦労して買った一軒家だ。
平日は夜遅くまで働いて、休日はこうして3人の時間を大切にしてくれる。
大好きな両親。