第6章 ろく
気づくと2人で言い合いを始めるから、安室さんからスプーンを取りあげて自分で食べ進める。
あたたかくて、おいしい。
…喧嘩さえなければ。
だいたい、喧嘩するほど仲がいいというし、というか、その喧嘩を楽しんでる節がある。
当たり前か、もう何年も会えてなかった2人なんだから。
私を介してでも会えてよかったのかもしれない。
けどそれにしたってだ。
2人だけの世界っぽくなってて気に食わない。
もぐもぐもぐもぐ
っていうか、何見せられてるの私。
ケンカップル?
そっちのタグした方がいい?
もぐもぐもぐもぐ
「ごちそうさまでした」
「えっ、もう??」
驚く安室さんをよそに、ムスーっとする。
「美味しくなかったですか?」
キュルンとした目をするけど、心配しなくてもめっちゃくちゃ美味しかったです!
胃に優しいかんじでした!!
「すぐ2人の世界に入るんだもん」
と、言うと2人して目配せしてる。
あー、ハイハイ。
アイコンタクトで伝わる仲なのね。
安室さんに器の乗ったお盆を押し付ける。
「ありがとうございました」
雑炊に対してのお礼だけ言って、あぐらをかく松田さんを追いやって布団に潜る。
コトッ
っと、音がして。
それも無視して目を瞑ろうとした時…
フワッ
と香るのはタバコの匂い。
顔を晒すように、匂いの方に背中を向ける。
そのあと、
ギシッ
とベットが軋んだ。
珈琲と、少し爽やかな香水の匂い。
ぺろっ
と、布団を少しだけめくる。
目だけを出すようにすると、私を挟んで両隣にイケメンがいる。
しかもムカつくくらいのニヤケ顔である。
両手に華。
イケメンの添い寝。
「2人の世界に入ってすみません」
「寂しかったのかよ〜、可愛いやつだな」
もう一度言おう。
腹立つくらいのニヤケ顔である。
ニヤケてもイケメンなことに違いないんだけど。
「ばか」
「mol計算できねぇやつに言われたかねぇよ」
「へぇ。なまえさん、僕もそれなりに勉強できるのでいつでも頼ってくださいね」
ずずずっとまた布団を被れば、両側から圧が加わる。
「あらら、カタツムリになっちまった」
「松田のせいだな」
「お前が揶揄うからだろーが」