第6章 ろく
「ほら、なまえゼロの作った雑炊だぞ」
「大丈夫ですか?」
「…………いや、今までのことが急激に恥ずかしくなり、意気消沈してるとこです、ハイ」
「そうですか、…」
グイッと力任せに肩を持たれる。
これは絶対松田さん。
「やば、顔まで真っ赤じゃねぇか」
もちろん背中側からじゃなく、正面から持ち上げられたのだ。
グイッと。
ボンネット開けるみたいに。
車の前のウォッシャー液入れるとこ、あそこボンネットだったよね?
え?車による?
それより松田さんえらく手慣れてるね?
と、現実逃避のために考えていたのは私。
「おーい、大丈夫か??帰ってこい」
「それより松田、よく女性のベットに断りもなく堂々と座れますね」
「女性も何もこんなちんちくりんに、そんな気起こさねぇし。差し支えねぇよ、なぁ?」
流石に今のは聞き逃さねぇーぜ!
べしっと松田さんの肩を押す。
「ふんっ」
「なんだよ、ふんって!この、暴力女め」
「安室さん、お腹空きました」
「はい、なまえさんのために腕によりをかけたので」
土鍋の蓋を開ける。
その瞬間フワッと香る出汁の香りに涎が溢れそうだ。
しかも安室さんが、ふーっふーっと少し冷ましてくれるから、余計に美味しそうな匂いが鼻を抜けてく。
「はい、なまえさん。アーンしてください」
餌付けされる雛の如く、私も素直に応じる。
一言だけ言いたい。
アーンというプレイが好きなわけじゃない。
ただ、考えてみて欲しい。
この顔面偏差値高男こと、安室さんにアーンって言われたら全国の女子みんな開けるしかなくない?
イケメンの指示従うしかなくない??
あと、タイミングが上手いんじゃ(○鳥風)
ちゃんとごっくんしたタイミングで程よい適温のアーンが来るんじゃ(千○風 パート2)
というわけで、甘んじてアーンを受ける私。
そんな私の伸ばした脚の上にかけた布団の上に、あぐらを組む松田さんは、なんかめっちゃ不貞腐れてるけど、めっちゃバブみがある。
重くないけど、そこに座るのはバブくない?
「松田、見られてたら食べにくいんじゃないか?考えろ、少し」
「うるせーよ、ゼロこそ、なまえが一人で食いてぇって顔してるぜ?」
「馬鹿ですか、彼女病人ですよ?」