第6章 ろく
「零、お前…」
すっと、私の横を見据えた安室さん。
ふらっと揺らぐと、ギュンっと松田さんに拳をむける。
「あ、安室さん!?」
わかってたけど、松田さんを通り抜ける手。
「僕は、非科学的なことは信じないんだ」
「相変わらず、頭のかてぇことだ」
「なのに、なんだよ。見えるのに、どうして触れない」
「…俺は、死んでるからな」
「お前なら、もっとやりようがあったんじゃないか?」
「あ?」
「もっと、あっただろ…、」
悔しそうに歯を食いしばる安室さん。
「じゃあ、俺だけが助かれば良かったっつーのかよ?」
「ちがうだろ!」
「俺の命一つで、どれだけの市民が助かったよ?あぁ?」
「お前が諦めなかったら、あの時だけじゃなくコレから先の国民の命だって守れたんじゃないか?」
「…」
睨み合う2人。
「松田がいないことで、悲しむ奴だっているんだ。
僕だってそうだ。お前だけじゃなくて、お前達がいたらって悔しいけど、何度も思うんだ。
…もう、遅いけどな」
「わかってるよ」
俯く2人みて、グッと胸が痛む。
「…」
くいっと安室さんの服の袖を引っ張る。
「安室さん、玄関だと他のお家にご迷惑なので、ちゃんと中でゆっくり」
「お言葉に甘えます。松田、わかってるよな」
「ったく、仕方ねぇな」
大雑把に頭を掻いて、安室さんの後を追う松田サン。
飲むかわからないけど、2人にコーヒーを淹れる。
もちろん、インスタントだ。
「松田サンは飲めないと思うので、匂いだけで我慢してください」
「嫌がらせかコラ」
「僕と松田の分まですまない。松田、言い方を考えろ」
「ゼロは説教臭くていけねぇ」
「ふふ、」
コトッと2人の前に置く。
「で?」
「でとは?」
「この非科学的な現象の説明を求む」
「それは俺よりこいつの方がわかってるだろ。っつーか、お前知ってるだろ」
「本人の口から聞くのが筋だろ。勿体ぶらないではやく言え」
「知らねぇって、俺が聞きてぇよ」
また睨み合う2人。
誰か止めてくれればいいのに。
などと他人事に思う。
っていうか、シリアスな場面で申し訳ないが。
私病人ぞ?
そろそろ和解してくれでもよくない?
ケホッとかやった方がいい?
ねぇ、やった方がいいわけ?