第5章 ご
翌朝、目が覚めて、いつもの天井にどうしてだろうと、覚醒しない頭を働かせる。
昨日、ポアロに行って独白したことまでは覚えてる。
思い出したら、恥ずかしすぎてモグラになりたい気分だ。
今、マンホールがあったら間違いなく入っているはずだ。
カーテンを開けるためにベットから立ち上がると、目に入ったタバコ。
ライターはどこだっけ?
「あった、あった」
ライター片手に徐に一本取り出して、ここじゃあなんだとベランダに出る。
ここに出るのも、しばらくぶりな気もする。
そういえば、借りたティシャツ返さないと。
って、ティシャツもタオルも干してある。
私寝ぼけながらやったのかな。優秀すぎん?
痛々しいから元気に、我ながら笑えてくる。
「よっこいせ」
少しだけ立ってるのがしんどくて、段差に腰掛ける。
部屋に匂いがつくと、しょうもないことにになりそうで、今でもだいぶメンタルげきよわなのに、この匂いを知ってからならなおさらげきよわになってしまう気がすると、かろうじて窓を閉めて。
そこに寄りかかりながら、人生で初めてタバコに火をつけた。
苦いからなのか、強いからなのか、なんとも言えない味に、こんなものが好きだったのかと涙と共に咳をした。
初めてのタバコは酷い味だった。
二度と吸うもんかと思った。
でも、
纏わりついた匂いに、違う意味でまた泣けてきた。
「うぅ、っ、」
ドタバタと激しい音がして、背中の窓が開く。
「なまえ!!」
びっくりして、驚いて、涙も引っ込む。
「あ、え、」
「びっくりしました、部屋を覗いたらいないので…よかった、」
へたへたとしゃがみ込む彼の髪に、朝日が当たって、キラキラと光っている。
「どうして、あなたが、…安室さん」
声をかけると、吸い込まれそうなほど綺麗な目に強く惹かれる。
と、それからすぐ詰め寄られた。
「どうしたもこうしたもって!あなた吸ったんですか?!こんな強いの!」
すごい剣幕に驚きつつ答える。
「まぁ、…はい。一口で吸えなくなっちゃったんですけど、私にはとても苦くて。重くて。」