第5章 ご
「おかしいって、思うかもしれませんけど、…でも、松田さんがあなたのことを教えてくれたんです、あなたと彼の他の同期のことも」
思い出すだけで、悔しくて悲しくて涙が止まらない。
「信じられませんよね、」
私だって、同じ立場だったら絶対に信じない。
「…信じるかどうか、僕はあなたのことをよく知らないので、今はまだ判断出来かねます。
よかったら、教えていただけませんか?
…そうだ、自己紹介がまだでしたね。僕の名前は、安室透。
体、冷えたでしょう?暖かい飲み物を入れるので座ってください。」
また支えるように、私をエスコートして席に座らせる。
「…お金、もってないので」
「この間、お預かりしてますよ。それから、僕からのお詫びも兼ねて。閉店後なので、簡単なものしか作れませんけど。アレルギーとか嫌いなものとかありますか?」
「…グリンピース」
「ふっ、…かしこまりました」
彼は手際よく、作業を始めて。
正確な仕事をする、赤褐色の腕に私は少しだけ見惚れてしまった。
夢中になっていたせいか、あっという間に作ってしまったのは、この間食べられなかったハムサンドと、ドリンクには、ホットココア。
「僕も夕飯まだなので、ご一緒させてください」
と、私に運び終えた後に自分にはコーヒーを入れて、私の一つ席を挟んだ隣の席に座った。
「改めて、この間は少々怖がらせてしまい、すみません」
「私の方こそ、騙すような態度、申し訳ないです。すみません」
会話をうまく繋げられないのは、私のせいだ。
だって、さっきからすごく気遣ってくれてるのに。
「僕、探偵をしているんです」
「たんてい、?」
「はい。だから、よかったらあなたが思ってること、教えてくれませんか?何か力になれるかもしれません」
「………ぜろ、あむろさんは、松田さんの同期なのに、探偵さんで店員さん、なんですか?」
「えぇ。…けど、あなたを危険に晒すわけにはいかないので、松田が同期なのは、絶対に口外しないで下さいね。」
少し楽しそうに、だけど芯のある声で言う。
「それから、ゼロっていうあだ名も、僕の大事な宝物なので、内緒にしておいてください。僕とあなただけの、秘密です」
「ひみつ、」
「えぇ、仕事の都合上」
そういうもんなのかと、うなづく。