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無色透明な赤い糸       【DC】【松田】

第5章 ご


 空腹なんて忘れて、せっかく並んだレジもあと1人待てば私の番だったのに、気づいたら列から外れて商品棚に全て戻していて。

 手ぶらで並んだレジで、人生で初めてタバコを買った。
 年齢確認も、少しだけ緊張しながら受けて。

 私は少し大人になった気がした。
 …いや、流石にもう20歳は超えていたけれど。

 数十円残ったお金は、レジの近くにあった募金箱に入れた。

 このタバコが、何になるって言うわけでもないのに。

 コンビニの両開きのドアの前で、そういえば雨だったと思い出して、とりあえず外に出たものの軒下で雨宿りさせてもらう事にする。
 もちろん自動ドアの邪魔にならないように、少し影の方で。

 このまま家に帰ってもいいけど、流石に雨脚が強すぎる。

 馬鹿だな、わたし。本当に計画性がない。

 タバコなんて買わずに、傘の一本でも買った方がまだ使い道があったのに。

 そんなことを思い出したら、なんだかさっきまで昂ってた気持ちが落ち着いてきて、今度は急降下し始めた。

 「サイアク…」

 全身濡れるより幾分かマシかと、しゃがみだすと背中に雨粒が当たって、これはこれで失敗だったかと思い始めたものの、胸に抱えた小さな箱が濡れるよりもマシかと考えをシャットダウンする。



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 雨のせいで少しだけ体が冷えてきた頃、雨音はするのに雨粒が当たらなくなって、私は少しだけ視線を上げた。

 見たことのある顔だった。

 「ぜろ、さん、」

 私を見て、驚いたような彼はすかさず、自分のジャケットをぬいで、私の肩にそれを羽織らせた。

 こんなに濡れてしまった体にかけたら、彼の服だって汚れてしまうのに。

 「大丈夫ですか?立てます?」

 こないだは、怖いと思ったのに。
 なんだか、すごく優しくてあったかい。

 フワッと香る匂いは清潔感のある匂いで、なんだか胸を締め付けた。
 
 「支えますね」

 なんて、許可をとってから私を立ち上がらせると、

 「…の、近くなので。そこまで歩けますか?」

 今、なんて言ったんだろう。
 まぁ、いいや。

 コクッとうなづいて、支えられるがまま道を歩く。

 けど、
 この人はあんなところで何をしていたんだろう。

 見覚えのある建物を前に、彼は少し待っていてください。
 …と鍵を開ける。

 


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