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無色透明な赤い糸       【DC】【松田】

第4章 よん


 その時、カランと鳴って開いた扉…ー

 「ゼロ…」

 フリーズしたように、止まった松田サンから出たのはそんな言葉を、私も繰り返す。

 「え、ぜろ?」

 ふっと顔をあげたのは、褐色の肌に色素の薄い髪をもった男性。
 風にその髪がなびいて、金に輝く。

 バチっとアイスブルーの瞳と逢った。

 金髪、蒼眼…。

 その間、数分にも満たないような、はたまた何時間も経ってしまったかのような…。

 ハッとした時隣を漂う松田サンの、サングラスの脇からのぞく瞳が揺れているのに気づいた。

 「松田サン?」

 ボソッと呼びかける。

 「…お客さまですか?」

 胡散臭いような爽やかなような、笑顔を浮かべて近づいて来たその店員さん。

 「あ、えーっと…………。はい」

 松田さんに視線を移す。

 「わかってるっつーの」

 私にしか聞こえない声で、松田サンが言った。
 …あんな表情で固まっちゃったから、どうかしたのかと思った。

 「では、こちらへどうぞ」

 と、案内されて辿り着いたカウンター席。
 奥の目立たないボックス席でよかったのに。

 コレじゃ、松田サンに事情聴取すらできないじゃないか。 

 「メニュー決まりましたら、お声がけください」

 少し恨めしく思いながらも、その店員さんにうなづいた。

 「…あいつだよ、」

 差し出された美味しそうなメニュー達に気を取られていると、やっと動き出した松田サンが言った。

 私は知らないふりで耳を傾ける。

 「同期のゴリラみたいなやつ」
 「は?」
 「警察学校の首席で、誰よりも頭がキレて情に熱くて、努力家で、俺の好敵手。…はは、久しぶりだぜ、まさか、こんなところで働いてるなんてな」

 どこか寂しそうに、嬉しそうに笑っている。

 「暫くぶりなのに、全く変わりねぇのな」
 「松田サン…」

 その店員が聞き耳を立てているともしらずに、私は呟く。
 調理の音で聞こえないなんて、やっぱり考えが甘かった。

 「おい、気をつけた方がいいぜ。ゼロは、勘が鋭いからな」

 さっきと打って変わり、どこかワクワクしたような松田サンの弾んだ声。

 「それってどういう?」

 こそこそ、と話していたつもり。
 それでも、盛られた料理達が皿に並べられて、目の前に運ばれた後、捕らえられたアイスブルーに私は体温を無くした。
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