第3章 さん
「ところで松田サン」
「あぁ?」
「帰りに、同期の話?してましたけど、どんな方々だったんですか?」
「面白ぇ奴ら」
「勉強のBGMにきいてあげます」
「ラジオか、俺は」
といいつつ、昔を懐かしむように話し始めた。
…それはもう、面白おかしく。
教官には少し同情してしまったけど。
「松田サン、サングラス警察学校でも付けてたんですか?」
「そんなわけあるかよ。つけてねぇよ」
「へぇ」
意外…と思い始めたのと同時に、サングラスの下の目がなんだか気になってしまう。
でも、サングラスとテンパとったら、松田サンのアイデンティティの崩壊だもんね。
なんて我ながら失礼なことを考える。
「つーかよ、成り行きでお前についてきちまった訳だけど」
あれ、警察学校の話あっという間に終わっちゃった。
ハガキでトークテーマ、リクエストしたほうがいいのかな。
「はい」
「よかったのか?」
「まぁ、成り行きですし」
この小指の先に、松田サンに繋がる赤い糸があるせいだし。
「なんでお前なんだろうな」
ボソッといった松田サンに、なんとなく返す。
「"運命の相手だからですよ"」
ガツンと変な音がしで振り向くと、松田サンのズッコケた音だった。
私と目が合うとぽぽぽっと真っ赤に染まった耳とほっぺ
「ば、バカ言うんじゃねぇ!」
「大丈夫ですか、すごい音しましたけど」
ズッコケた拍子で、サングラスがずれている。
え、…なんかすごい綺麗な目してる。
興味本意のまま、不躾とは思いながらその目が気になって、松田サンのサングラス、略して松田サングラスに手を伸ばす。
…松田サングラスは我ながらどうかと思う。
「な、なんだよ!?」
あ、触れた。
しっかりとある、サングラスの感触に不思議に思いながらも、そのままはずす。
松田サンはされるがまま、赤く顔をそめているけど……
あれ…、まって…、
実はこの人イケメンなのでは?
「松田サン、」
「は?」
「めっちゃ顔いいね?」
「ぁあ?!」
ジーッと、見つめているとガシッと顔を掴まれた。
「バカヤロウ、あんまり大人を揶揄うんじゃねぇ」
「その辺のアイドルよりかっこいいと思った」
…金髪蒼眼じゃなくても。
「もう喋んなばか、口塞ぐぞ」