第3章 さん
「お、おい?!何も泣くことねぇじゃねぇか?!」
涙は女の武器とはよく言ったものだ。
大の男が狼狽えてる。
「泣いてないもん、警察ならこの問題助けてくださいよ。馬鹿」
「人に物を頼む態度をとれ、可愛くねぇ」
ふよふよと私の頭に乗っかって言う。
松田サンにとったら、私なんてただのクソガキだろうし可愛いって思われなくたって当然だし、なんとも思ってないし。
きっと、
松田サンの想いビトは、髪が長くて優しくて爪の先までオシャレで、金髪で胸がデカくて、そう言う相手なんでしょう?
偏見だけど。
むしろ、八つ当たりだけど。
「んぁー…………おい、ここ読んでみやがれ」
指を刺された先に目を向ける。
読んでもわからないし…と、思いつつ素直に読む。
「……そっか」
「ここを受けてのこれだから、Cになるんだよ」
「じゃあ、ココはこう?」
「ん?…あぁ。だな。
って、おめぇ、飲み込みはえーじゃねぇか。やればできんのな」
そう言いながら、ぽんぽんと頭に触れてくる。
頭ぽんぽんはずるいだろ、…グラサンの癖に。
私のタイプじゃないくせに。
「松田サンってば、頭よろしいんですね」
「ゼロには負けるがな」
「ゼロってなんですか?宇宙兵器?」
「同期だよ」
「キカイダーの仲間?」
「キカイダーって、…はぁ。まぁ簡単に言うとゴリラだよ」
「………あぁ」
「なんだよ。その含みのある言い方は」
幽霊って、動物には見えるって言うもんな。
ゴリラの友達の一人や二人いたって問題ないだろう。
「動物の友達なんて、メルヘンなんだなって思っただけです。
見た目に反して。」
「あぁ?」
「シルバニアファミリーマツダ」
ベシッと叩かれる。
「痛いっ、…ったくお巡りさんに言い付けてやろうかな」
「俺がお巡りさんだ」
「世も末ですね。世紀末かよ」
「ったく、可愛いくねぇ。お前化学より少女漫画見て、女子のあるべき姿を勉強した方がいいんじゃねぇ?」
「三次元に萌えはなし」
「お前が女であることの方が世も末だよ、馬鹿」
優しくない運命の相手に、化学の教科書をぶつける。
「いってぇ。…暴力女、ったく俺が生きてたらお前公務執行妨害で逮捕だぞ」
「私だって名誉毀損で逮捕してやるもん」
「上等だ、コラ」