第2章 に
「松田サン、ぶつかってはないですよ」
「まぁ、幽霊だからな。けど、気持ち悪ぃんだよ、無機物通り抜ける時の感覚。」
「へぇ」
「興味ねぇだろ?」
ずんっと、私の前に飛び出てくる松田サン。
興味ないわけはないんだけど。
幽霊だしぶつかるなどということは、そのままに気にせず歩き続ける。
「うぉっやめろよ、人に通り抜けられんのも気持ち悪いんだぜ。
内臓とか見えるんだからな」
うえ…それは、
なんとも気持ち悪い。
「お前、オムライス食ったろ?中見えたから、分かるぜ」
この人デリカシーないのかな。
「うえっ、」
まぁ、私も散々脳内で言ってるのでブーメランなんだけど。
本人にも多少デリカシーないこと言ったかも。
「つーのは冗談、コレに懲りたら俺を通り抜けるの禁止な。」
「というか、オムライス最近食べてませんけど」
「じゃあ、なんで吐き気すんだよ」
「想像したのよ、やめてよ、理科実験室じゃないんだから」
「なんの例えだよ」
「松田サンが小学生男子みたいなからかいかたするからでしょう?お願いだから、私の前に立たないでね。」
「失礼な奴だなーぁ。」
またふよふよと浮かんでいろんな飛び方をしてる。
気まぐれな猫みたい。
大きなあくびをして、ヨレヨレのスーツをまたたかせてる。
「松田サン」
「あんだよー」
「すみません」
「なに、急に」
「私も、ちゃんと会話するの久しぶりだから」
パチパチと目を瞬かせてる。
「お前…」
「あ、べつに。ぼっちじゃないんで。1人が好きなタイプなんで」
「ふっ、」
ほんとに、ふわ〜っと漂ってる。
「なぁ、俺の同期みんな何してると思う?」
「急にセンチメンタルなこといいますね?」
「仕方ないだろ、ふぁあっ、暇なんだよ。」
「暇って…」
「死んだら、あいつに会えると思ったんだけどよー、そんなにうまくいかねぇもんだな」
「へぇ、想い人いたんですか?」
「まぁな」
モヤモヤとしてくる。
だから、
残念ながら私とあなたが繋がってるから、あなたはどうしたってその想い人とくっつくことはないんだよ。
なーんて、意地の悪いことを考える。
ずっと1人だったんだから、少しくらい許してよ。