第2章 に
「なにそれ、そんなことってあります?」
「そもそも、この状況がありえねぇ。」
…まぁ、確かに。
「ところでお前、」
「はい?」
「お前独り言いってるみたいになってんぞ」
その助言にあたりを見渡せば、確かに周りから人が離れてく。
「…いまから、松田サンに返事しないので。家に着くまで」
…返事はしないって言った。
ものの、気の毒になってきて裏道へと入る。
「つーかよ、重力どうなってんだこれ」
歩き出して数分ヘリウムガスの入った風船みたいに、ぷかぷかと浮き出した松田サン。
某猫型ロボットの黄色いプロペラをつけた少年の如く、浮いている。
私はさながら凧揚げをしているような気分。
それじゃなかったら、やっぱり風船持ってる気分。
って、飛び方いつの間にかマスターしてるし。
「コツ掴むと、歩くより楽だな。コレ」
飄々としてる。
爆弾に巻き込まれてこんな体になったのに、何でもないような態度で。
「お前普段からこんな道通ってんのかよ、物騒な女だなぁ」
「松田サンと会話をするために、仕方なくに決まってるじゃないですか」
少し刺々しいのは、少なからず彼を運命の相手と認めているからって言うのもあるかもしれない。
「なぁ、」
だってさ、運命の相手がさ、こんなことになってるなんて気づきもしないで、自分のことだけで必死で生きてた私、一方の相手は、誰かのために犠牲になってさ。
少しだけ凄いなって、悔しいなって、そんな気持ちしてきてさ。
「はい」
犠牲って言い方よくない?
うん、よくないかもしれない。
「つーかさ、お前どっかで会ったことある?俺と」
確かに金髪蒼眼のマント翻すタイプじゃないけどさ。
「ないと思いますけど。私、幽霊と虫と暗闇と雷とグリンピースほど嫌いなものないんで。」
「遠回しに俺もディスってる?」
こうやって刺々しい私のことも、受け流してくれてさ。
なんか、松田サン悪い人じゃないかもとか思ってる自分もいてさ。
「松田サンは、幽霊っぽくないんで平気です。堅気じゃないみたいだけど」
「失礼な奴だな。って、おい、お前ここの道狭すぎ。さっきから柱にぶつかってんだよ、もっと広いとこ通れよ。」
確かに、というよりさっきからうまく通り抜けてるじゃん。