第2章 に
ぐりぐりとゲンゴツで頭をこねられる。
「お前失礼なこと思ったろ?言ってみろ」
「設置するほうかなって、いてて」
「ばーか、俺は解体する方が好きなんだよ」
「ギブ、ギブギブ。ほんとすみません、嘘です」
「もう言わねぇか?」
「言わないっていうか、言わされたって言うか」
最終的にべしっと叩かれた。
「暴力反対」
「お前だって言葉の暴力じゃねぇか」
「うっす、…って、茶番はここまでにしてですよ。ほんとですか、それ」
「嘘つくように見えるかよ?」
「馬鹿正直っぽさはあると思いましたけど」
「お前それ、馬鹿って言いたいだけだろうが」
「…」
「…」
「…」
「なんか言えよ、あ?」
「どうして、松田サンが解体しなきゃいけなかったんですか?」
「…」
松田サンじゃなくても良かったんじゃないの。
そしたら、こうしてここに縛りつけられることもなかったんじゃないの。
そしたら、私の糸だって消えずに済んだんじゃないの。
もっと早く巡り会えたんじゃないの。
「…どーだろうな」
ねぇ、それってどう言う意味?
「もう着くな。なんか久しぶりに会話したわ。すごく失礼な奴だったけど、テンポ合ってたし楽しかったわ。またこいよ」
タイミング悪く、下についてしまったゴンドラ。
係の人がドアに手をかける。
「とりあえずいったんでましょう、もっと詳しく聞きたいです」
「無理だ。何度も出」
松田サンの言葉を遮るようにドアが開いて、そこに留まるわけにも行かず、えいっと赤い糸ごと彼を引っ張る。
飼い犬みたい…。
係の人に会釈してそのままゴンドラを降りる。
「なんで、だ?」
後ろでぶつぶついいながら、渋々私についてくる松田サン。
「何でってなにがです?」
「俺、何度もあそこから出ようとしたんだぜ。今日まで、一度も外に出られなかったんだよ。」
まさか、この糸にそんな能力はないでしょう?
「出たくなかったと言うわけではなく?」
「そんなわけねぇだろ、禁煙なのにタバコ吸っちまったから、ゴンドラに祟られたのかと思ったんだよ。」