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残り香     【DC】【萩原】

第6章 6th


 勝手に不安になって、溜め込んで、この時爆発するみたいに傷つけた。

 私の手間にならないように、夜ご飯は買って食べるからいらないって言った研二に、1人分も2人分も変わらないからと言ったのは私だ。

 だって今日は、特別な日だったから。
 せめてご飯だけでもって、私が自分から用意したんだ。

 「研二、私の方こそごめんね」
 『え?』
 「ごめん…」

 全部、全部、全部思い出したよ。
 あぁ、夢なら覚めないで。
 もしも、現実をなぞっているなら、もう間違えないから。
 研二を傷つけたりしないから。

 捨てていいなんて、思ってもないこと言わないから。

 『違うよ、ゆりは悪くない。不安にさせたのは、俺なんだから』
 「…違うよ、研二を責めるなんてどうかしてるんだ。…お仕事だって、ちゃんと理解してる。
 尊敬してるし、頑張ってるとこ1番近くで見てるのに」
 『ゆり』

 ぐうぅ

 その時、研二から大きなお腹の音。

 『っ、』

 研二の一耳が真っ赤に染まって、目を合わせたら吹き出す。

 『ははっ、ごめん。腹減ったみたい、仲直りできたみたいで安心したんだ』
 『あ。今、温め直すね。疲れてるのに、困らせてごめん。温めてる間、シャワーでも浴びてきたら?』

 そう言って立ちあがろうとした時、ぐいっと私の袖を掴んだ。

 『ゆり…、待って』
 『え?』
 「俺、お腹も減ったけどさ。もう、ゆり不足だっつーの」

 大きく腕を広げて、そのまま私を包み込むと、ぎゅーっと強く抱きしめて倒れ込んでくる。

 『捨てられるかと思った』

 弱々しく言う研二に、私は少し驚いた。

 「何言ってんの、私研二とちがってモテないし。ずっと一途だし」

 あぁ、…嘘。

 「研二のこと、大好きだよ。ううん、愛してるとか、もっとそれ以上で。
 なんて言えばいいかな」
 『うん、』
 「都合がいいって思うかもしれないけど。些細なことで、取り乱しちゃうくらい、たまらないの」
 『うん、伝わってる』
 「違うよ、伝わってない。研二わかってない。全然、全然全く伝えてないの、伝え切れてないの」


 今でも、ずっと後悔してるの。


 『ふ、』
 「どうして笑うの」
 『ごめん、だってあまりにも可愛いからさ』
 「ばかにしてる」
 『ゆりの方こそ』
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