第1章 1st
萩たちとは、幼馴染で同期だった。
萩も松も、二人ともそれぞれ野望があって、この道に進んだみたいだったけど、私は2人といたいからこの仕事についた。
2人には内緒にしてたけど、バレた時にはもう入寮してたし、松は1ヶ月口を聞いてくれなかったけど………
それでも、なんとか認めてくれたのは、萩が助言してくれてたから。
それから、まもなく人質事件とか建設中の道路に飛び込んだりとか、まぁなんやかんや色々あって、萩から研二に呼び方が変わったの同時に私たちの関係も幼馴染から恋人へと変わった。
なんて、遠い昔のことだ。
そもそも研二とは、長い時間両片思いだったんだけど…まぁ。それはおいおい。
「こっち片付けたぞ。」
やっと病院から出られるー。
看護師さんたちはみんな天使だったし、相部屋の人たちもよかったけど、体にいい病院食は味が薄くて物足りなかったから、嬉しい。
「ありがとう、安室さん」
この間、プロポーズしてきたと言うのに、素知らぬ顔で手伝ってくれる優しい元同期。
「こんなもんか。ま、検査入院だったから荷物も少ないですしね。」
「うん、車ないから助かったよ。」
「ところで僕のマンションでいいですよね?」
会計を済まし、大半の荷物を持ってくれた元同期は、私をスマートに助手席へとエスコートし、自分も運転席へと座って、エンジンをかけた。
「ん?」
「だから、僕のマンションでいいですよね?」
「なぜ?」
「プロポーズしたからに決まってるじゃないですか」
「おおっと」
「返事はハイか、イエスかうん、か、オフコースですよ。」
「ちょっと最後のいらない。…まぁ、優良物件ではありますがね、あなたは。…ファンに背後から刺されそうで嫌。」
「どんな理由ですか、それ。」
動き出した車に、この車に乗って私を振り回すのは、もしかしたら研二だったかもしれないのになんて、そんなことばかり考えていた。
「…30まで待つって言った。だから、もう少し待って。」
ちょうどいいのかもしれないな、このタイミングで
だけどさ…
「安室さん、知ってる?本当の恋だったら、もう一生それ以外いらないって思えるんだって、例えそれがなくなっても、その思いだけ抱えて生きていけるんだって」
横顔しか見えないからって、きっと私卑怯だ。