第6章 6th
すらすらと躊躇なく出た言葉は、なんとなく自分で言ったことがあるような気がして。
刃物のように鋭い言葉たちに、こんな気持ちを持っていたことを今更気付く。
あぁ、やっぱり美化されてたのかもしれない。
『重いなら言いなよ』
今更、やめられないけど。
『いらないなら、早く捨てなよ』
いっそのこと、その方が楽だったかもしれないね。
『研二は全然私にやさしくない。私のこと、ちゃんとみてくれない。松とか他の子だけで満足するなら、そう言えばいいじゃん!!
焦って帰ってこなくていい!どっか行って!もう2度と顔も見たくない!!』
『ゆり…』
泣きたいのは私の方なのに、どうして研二がそんな顔するかな。
『…わかったよ』
研二の一言にどっと体が重くなる。
出した言葉は自分からで、必要以上に傷つけたのは私の方なのに、"わかった"の一言で、やっぱり私なんて必要なかったんだと気づいてしまった。
あぁ、研二。
あまりにもわかりやすくて、簡単だったよ。
堪え切れなくて、溢れ出す。
こんな時に、伝う自分の涙の暖かさが嫌に腹が立つ。
悔しくて俯いた。
顔も見たくない、見せたくない。
何も言わない研二が、静かな音を立てて離れていく。
本当にあっけない。
今起きたら、きっと研二はもう隣に居てくれないんだろうな。
夢でくらい、幸せであってもいいのに。
どこに居たって、ハッピーエンドには程遠いみたいだ私たちは。
それでもって、私はいつだって置いていかれる方。
急に足に力が入らなくなって、へたり込む。
弱すぎかよ。
思い出した、こんなことなら卒業式の日に告白してくれた、クラスメイトの男の子を選ぶべきだった。
私を想ってくれてたんだから、きっと研二みたいに私を何度も泣かせない。
…今からでも遅くないかな。
研二以外を想えるはずもなく、全く想像することすらできない。
なのに研二は出来るんだ。
器用だから。
止まらない涙は、何度拭っても床にシミを作ってく。
鼻を啜っても、何をしても、全然止まらない。
そのうち体が、水切れを起こした雑草のように、枯れてしまうような気さえしてくる。
突然ふわっと、何かが私を包む。
驚いて、ボロボロの顔をあげれば、先程と同じく眉を下げた研二がそこにいた。