第4章 4th
「俺は、…」
「なによ、」
「俺は、俺のこと好きすぎるゆりが嫌い。もっと、自分のことちゃんと大切にしなきゃだめだろ?」
「好きじゃないって言った」
「うそつき」
「研二が嫌いなら、べつに大切にしなくてもいいもん」
…言った後、少し後悔した。
「本当に言ってる?」
「…うん」
そっと、体温が離れる。
「俺のこと、ちゃんと見て言って」
真剣な目が、痛い。
ずるいよ、研二。
私にばっかり言う。
「…」
「むーってしない。ほら、いってみ?」
「なんで研二のこと思っちゃいけないの、先にいったのは研二なのに、無責任じゃん。
私だって嫌だよ、なんで研二じゃなきゃだめなのってずっと7年思ってるよ、でも仕方ないじゃん。
研二が、いい奴すぎるんだもん、こんなふうになったの、研二がずっとそばにいたからだもん」
「うん、」
「研二だって、倒産しないからって動機、不純じゃん」
嫌な奴、なんでこんなことしか言えないんだろ。
「悔しい、なんで泣けてくるんだろ」
ぽろぽろと落ちてくる涙が嫌だ。
武器にしてるみたいで、すごく嫌だ。
「泣くの嫌なのに、悔しい」
「うん」
「研二、ごめんね」
「俺も、ごめん」
謝っても止まらない涙に見かねて、また研二が私を抱きしめる。
「もういいの?もっと、言いたいことあったんじゃない?」
「研二の悪口、いっぱい言ったからすっきりした」
「ならよかった。…ごめんね、ゆり」
「私のこと甘やかすから、こんなどうしようもない奴なったんだよ」
「そーかな」
「そーだよ」
研二なしじゃ生きてけないなんてさ、やっぱりどうしようもないでしょ。
「防護服はさ、」
「着なかったのは反省してる」
「違うよ、研二似合ってたなって。
危険な仕事なのに、凄いなって。松と仲良くしてる研二もすきだったから、2人がいれば最強だって本気で思ってたから、」
「…」
「やっぱり寂しい」
「…ゆり」
「なんで2人なの、」
「ん」
「思っても仕方ないこと、わかってるけど…
でも、いつも思っちゃう」
「うん、」
「研二は正義のヒーローでも、代えのきく、駒でもなんでもないのに」
「うん」
「服も、ご飯もいらないから、何もいらないから、研二がほしい」