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残り香     【DC】【萩原】

第4章 4th


 「美味しいものも楽しいことも、研二と共有したい」
 「うん」
 「梓ちゃんも、蘭ちゃんも園子ちゃんも、話ちゃんと聞いてくれるし、大好きだけど研二じゃない」

 困った顔して笑う研二、見なくても想像できる。

 「ゼロは、なんでもできるけど…研二にはなれない」
 「…」
 「研二がいいんだもん」

 諭すように、ぽんぽんとリズムよくさすられる手。

 「研二じゃなきゃいやなんだもん」
 「ゆり」
 「…」
 「俺、そんなに思われてたんだな」

 独り言のように呟いた研二。
 確かに、言葉にしたことは少なかったかもしれない。

 「わかんなかったの」
 「いや、わかってたよ」
 「うそ」
 「わかってた。…改めて、思い出したんだよ」
 「研二は調子いいことばっか言う」
 「はは、そーかもな」

 抱きしめられた腕の強さの意味も、研二のこともなんだかさっぱりわからない。

 …わかりたくない。

 聞き分けのいいフリなんて、もうしたくない。
 今更かもしれないけど。

 「研二、」
 「なに?」
 「今からもっと酷いこと言う」
 「えー、前置きから不穏なんだけど。なに?」
 「ばか、あほ、まぬけ」
 「えぇ」
 「研二に爆処なんて、警察なんて向いてない。
 研二になんて、会わなきゃよかった」
 「…」
 「研二なんか嫌い。いつも、いつも、陣平ちゃんって。
 なんで松ばっかなの?
 松に誘われたからって、悩んでたくせに爆処に入って、最後の電話だって、松だったって聞いた。
 そんなに松がいいなら、私なんてほっといて松と付き合えばよかったじゃん」
 「…ごめん」
 「許さない、防護服着なかったのも」
 「それも、ごめん」
 「研二はごめんばっかり、私ばっか怒って馬鹿みたい」

 悔しい。 
 研二の優しさが憎い。

 「…じゃあ、俺もいおうかな。たまには」
 「いいよ、喧嘩なら負けないもん」
 「ゆりだって、警察向いてない。俺が警察になったからって、後追うみたいな進路の決め方して、動機が不純すぎる。
 危険な仕事ってわかんなかったわけ?」
 「…」
 「俺のこと想うのは構わないけど、吸うなって言ったタバコ、馬鹿みたいに吸ってさ、体壊してさ。馬鹿じゃねーの」

 反論できなくて、ぎゅっと服の裾を掴む。

 「この際だから言うけど、」
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