第4章 4th
「それはずるくねぇ?」
「ずるくないよ。だから、いっつも松に嫉妬してた。負けたくないって、研二と松ってデキてんのかなって」
「は?」
「体育祭のとき後夜祭でダンスした時もさ」
「なんだっけ、それ?」
「勇気出して誘おうと思ったのに。名前忘れちゃったけど、違う子に研二誘われてて、俺もう踊る相手いるんだって断ってたの聞いて、いざ当日ってなった時に、研二の相手は松だったじゃん」
「あぁ、それは…まぁ、そんなこともあったな」
「ほら、あったでしょ」
「俺だって誘おうと思ったよ、ゆりのこと。
でも、委員長の子に誘われて遠くからでも分かるくらい顔赤くしてたから、俺脈ないんだなって思って、仕方なく陣平ちゃん誘ったんだよ。
ゆりしか、踊りたいと思える人居なかったし」
ジトーっと言い訳混じりの研二を見つめる。
「本当だって、俺、こう言う嘘はつかないだろ?」
「んー…、」
「信じてくれよぉ」
「ふふ、なんてね。話聞いてたら、思い出した。誘われた時、踊れないって断ったら、誰か好きな人でもいるんですかー?って言われて、誰かに言ったら噂されて、研二の耳に入って、友達ですら居られなくなったら嫌だなぁって思ってはぐらかしたんだよね」
「…それで?」
「それで、相手は研二ですかって。
いっつも目でおってるーみたいなこと言われて、無自覚だったからさ、研二を見てたの。
だから、委員長とあんまり話したことなかったのに、他人でもそんなに簡単に分かるくらい、目で追ってたんだって思ったら恥ずかしくなったんだよね」
パタンっと一冊目のアルバムを閉じる。
「今更ネタバラシしても遅いね」
「じゃあ、今から踊る?」
「こんな狭いところで?」
「いいじゃん、減るもんじゃないし。リベンジマッチってことで。さ、shall we dance?」
「ふ、あははっ、キメ顔してる。いいよ、踊ってあげる」
研二の大きな手を取る。
まるで未練を拭うみたいに。
「研二、楽しいね」
「うん」
ごっこ遊びみたいなものなのに、当時の私報われたなって思って。
「足ぶつけたーっ」
「俺もさっきから、ぶつけてる。狭いもんね。って、あぶねっ」
と、言った瞬間によろける。
逆転した視界の中で顔の横には研二の逞しい腕。