第4章 4th
研二の言った通り、5分あれば割と何でも出来る。
それこそ、家にある時計を直すのだって5分もかからず、おわったけど。
時計の針が戻った時、急に切なく感じたのはどうしてだろう?
「研二」
「な〜に?」
だけど、私が呼びかけた時、
研二が笑って振り向いたからさ。
「んーん、やっぱなんでもない。アルバムみよ!」
何冊か棚から引っ張り出して、研二が時計を直してくれてる間に用意しといた。
正直言うと小さい時、写真を撮られるのがあまり好きじゃなかった。
カメラを向けられてもあまり上手に笑えなかったし。
「はいはい」
「あ、見て。研二が鼻提灯してる」
「そんなんしてないだろ。こっちのゆりは、いびきかいてるけど」
「な、生まれてこの方したことないもん」
「それは嘘」
「研二、こっちの研二かわいいよ!髪ないっ」
「どんだけ前に戻ってみてんだよー」
「どうせなら生まれた時からって思って!」
「なら俺もー…って、ゆり写真撮られるの嫌いだったもんな。ある一定期間、写真ないのもったいねぇよ」
「今になって写真って貴重だなって思うけどさ、自分1人の写ってるのみたって面白くも何ともないよ。
逆に研二は撮られるの好きだったよね」
「そうでもないよ、別に。楽しかったから、残しておきたいってどっかで思ってたのかもなぁ」
アルバムにはたくさんの写真達。
研二の綺麗な長い指で捲られるページ。
写真を見てるふりして、伏せられたまつ毛の長さとか、
当時に思いを馳せてる研二を忘れないように、目に焼き付ける。
「あ、見て、研二の白目」
「こっちはゆりが転んで泣いてる」
当時、確かに私達はそこにいて、思い出というフィルムを回したはずなのに、印象的なもの以外不思議なくらい憶えているものは少ない。
「研二、どこまで憶えてる?」
…ずるいから、私は。
どんな言葉を貰っても、つまづかないように意気込む。
「全部、憶えてるよ。例えば…ここでキスしたこととかさ。
片想い、始めたのは俺の方が先だったしね。
ゆりは、男勝りだったからさー。
陣平ちゃんと殴り合いの喧嘩とかも良くしてたよね、俺を巡って」
「そんなことあったっけ?」
「あったよ、だってその時に…、」