第4章 4th
「じゃあ、私、今何したいって思ってる?」
「んーー、人もいないし…キスかな」
「それは研二がしたいだけでしょ、」
「タバコないから、口惜しいんだよー」
「しょうがないな…」
残していた最後の一箱を、彼に渡す。
「体に悪いんだから、1日一本までね」
「さすが、ゆりちゃん、用意周到!好き!最高!だいすき!!」
繋いでいた手を離して、ぎゅーっと私の肩を寄せる。
身長差があるから、いつもより近くてドキドキする。
「タバコ、火ぃつけてあげよっか」
「うん、つけて」
口に咥えられたタバコ、少し屈んで距離を取った彼が屈む。
目を伏せて、
ジュワッと火がつく。
「ありがとー。やっぱ沁みるなー」
「ふふ、やっぱりタバコ吸ってる研二かっこいい」
少し耳が赤いことにきづいて、珍しさに揶揄いたい欲が出る。
「研二、耳真っ赤」
「いちいち言わんでよろしい、意地悪すんな」
「研二くん、かわいいねぇ」
そう言った瞬間、珍しくふわぁっと私めがけて、吐き出した煙をかけてきた。
「ちょ、けむっ」
「タバコの煙、かける意味知ってる?」
「ふくりゅうえんになれってこと?」
「ゆりは、7年も俺の言いつけやぶってヘビースモーカーだったんだから、今更だろ。」
少し拗ねたように言う。
…まぁ、確かに。
「じゃあ、どんな意味?」
「ひみつー。ま、今夜楽しみにしててよ。今夜は新月だし。」
「じゃあ、まっくらだね。」
「でも、俺がいる。」
「うん」
そっか、
そうだよね。
「研二、はやくかえろ!」
「急に元気になった」
今度はわたしから、研二の手とって。
触れた指が交わって、繋がれる。
そろそろ日が暮れる。
暮れる前にかえって、研二の魔法にかかろう。
「きょう、夜ご飯私が作るね!」
「楽しみだなぁ」
「研二の好きなものいっぱいつくるね」
何気ない会話だけど、本当はこういう風にいっぱいはなしたかったの。
「じゃあ、その間俺お風呂洗うか」
「洗ってくれるの?」
「風呂洗い、得意だぜ?なにせ、鬼塚教場時代にしこまれたからな。」
「そんなこともあったね…あ、ねぇ。ご飯食べ終わったら、映画見る前に久しぶりにアルバム見よ!」
あの日から開かなかったアルバムを。