第3章 3rd
「んまぁい!腕上がったんじゃねぇの?!」
「…っ、研二食べれるようになったの?!」
だって、研二は…。
やっぱり、この7年間はただの悪夢だったの?
あの日を毎日毎日見ていた夜が夢だったら…神様は、やっぱりたちがわるい。
「…ほんとだ、俺…どうしてだ?」
「……?ハムサンド食べられなかったんですか?」
梓さんの声にハッとする。
…そうだ、今外だったんだ。
「そ、そうなんですよ。研二ってばハムサンドが得意じゃなくて、安室さんのおかげですね!」
フォローするように出てきた言葉は、ゼロをフォローする時に慣らされたからだ。
今のは少し棒読みだったかもしれないけど、そうなんですかぁっとポワポワする梓ちゃんに騙されてくれてよかったと心底思う。
「…でも、ゆりの手作りがくいてぇなぁ」
「熱々ですね」
「本当ですよ、目の前で見せつけられて妬けますね。営業妨害になりますので萩原さんだけご退店ください」
「安室ちゃん、てきびしー!俺だってJKとお話ししてぇじゃねーの」
「女好き、長髪、最低ヤロウ」
「もちろん、ゆりちゃんが1番だけどっ」
慌ててフォローを入れてくるが、そういえばこういう奴だったと思い出す。
研二と七年も会ってなかったから忘れてた。
というか、多分思い出補正で美化されすぎてた。
このひとは、人たらしだった。
「ハギは女ったらしだもんね!」
「ゆりちゃん怒った顔も可愛いけど、笑ってる顔の方が好きだよ、俺は」
怒る時、昔みたいにハギって呼ぶと、研二はパッと察して、機嫌を取るようにゆりちゃんって呼ぶ。
懐かしいけど、我に帰ったら恥ずかしい。
「…っ、」
「見て!俺の彼女が可愛い!照れてる!
やっぱ見ないで!」
むぎゅーっ
「僕たち何見せられてるんでしょうね、?」
「あはは。すごく意外な一面ですね、ゆりさんのこういうところ、初めて見ました!」
「か、帰る!」
「ざんねーん、俺まだ食い終わってねぇの。もー少し、待っててくんね?」
ばっと立ち上がったのに、研二が上目遣いするから、しょうがなく腰をおろす。
体温上がりっぱなしだ。
カランコローンと、ポアロのベルが鳴ったのはそれから数分後。
「梓さん聞いてよ、蘭がね!」