第3章 3rd
ー…ピンポーン
「誰かきたみたい、出てくるね。」
「あぁ」
研二が作ってくれたご飯の皿が空っぽになって、ごちそうさまをして、幸せなのに何か物足りなくもなって。
私って多分、よく深い。
「はーい。…って、安室さん」
「おはようございます、ゆりさん!
モーニングのお届けです!」
私が少しだけ開けたドアを、ぐいっと開いた安室さんがポアロと書いた皿を持って、玄関の中へ強引に入る。
「こんな朝から誰か、先客?」
怪しげに眉を顰めてゼロが言う。
「わかるの?」
「あぁ、なんとなく」
「なのに、中入ったの?」
「あぁ、知った気配がしたような気がしたので、…って、」
ぐいっと私にその皿を押しつけて、持たせると自分は靴を脱いでずかずかとリビングの方へと行く。
そういえば、研二とゼロがエンカウントするのってまずいんじゃ…
いや、そもそも、ゼロに研二が視えるの?
「なん、で…」
「やっほー、降谷ちゃん」
食べ終わった皿をシンクまで運んでる、研二。
それを見て、ゼロは固まってる。
その横を通り過ぎて、研二のそばに行く。
「研二、ありがとう。置いててくれて、よかったのに。片付けくらい、私やるし」
「いいって、いいって。それより、降谷ちゃんどうしたの?え?サンドイッチ?」
だんだんとゼロの視線が落ちて、そしてそのまま研二へと近づくと、止めるまもなくびっくりするくらい鈍い音がした。
研二のお腹に一発決まる。
なのに、研二はびくともしなかった。
「いっ…てぇわけはないんだな」
ボソリと研二が呟く。
どこか、悲しそう。
「降谷ちゃん?」
「…おまえは、」
「ぜろ?」
「…お前は、ハギ、…なのか?」
「そーだけど、もし俺じゃないとしたら、この一発は飛んだとばっちりになっちまうな?」
研二の言葉に確かにと思っていると、俯いていたゼロが顔をあげた。
「確かにな。…どういうことだ?コレ。」
「いや、切り替え早くねぇ?」
こういうやりとり、なんか懐かしいな。
「意外とガサツな、ゼロらしい。ふふ。研二、ゼロとも話してあげたら?ゼロ、コーヒーのむ?」
そういえば私、同期と話してる研二も好きだった。
「…貰いたいとこだが、ポアロで梓さんが待ってるんだ。だから、手短に頼む」