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残り香     【DC】【萩原】

第3章 3rd


 「余裕あったら、ちゃんと待てるんだろうけどな」
 「ぇ?」

 ご飯食べてる最中なのに、行儀悪い。
 ちゅ

 「ほら、早くたべちまえ。俺が我慢してる間に。」

 お行儀よく、座り直した研二がニヒルに笑う。

 「っ、ばか。」
 「よゆーないんだ、コレでも。」

 恥ずかしくなって可愛くないことを言っても、研二はニコニコと笑って。

 ほら、…余裕じゃん。

 余裕がないのは、私の方。

 研二が作ってくれたご飯ちゃんと味わって食べたいのに、早く研二にくっつきたくて、口にすすめる、箸の速さを上げる。

 「リスみたいだなぁ」

 いいもん別に。

 「研二のご飯、美味しい」
 「諸伏ちゃん仕込みだからね」
 「ヒロくん?」
 「そうそ。たまぁに、ゼロが料理してるとこにくっついて、ハラハラしながら見てる諸伏ちゃんが、ワンポイントアドバイスみたいに料理のコツ教えてくれんの」
 「なにそれ、面白い」
 「だろ?」
 「ねぇ、もっと聞かせて。色んなこと」
 「ご飯、食い終わったらね?」
 「うんっ」

 なんか、こういうの幸せだ。
 お腹も満たされて、研二もいて。
 話し上手で聞き上手な研二が、いっぱいお話ししてくれて、聞いてくれて、贅沢じゃなくていいから、こういう毎日が欲しかった。

 警察という仕事が、嫌だったわけじゃない。
 誇りも使命感も当たり前にあった。

 危険だから辞めてなんて言葉は、自分にもブーメランだし、研二にしたら天職だとおもったから、絶対言うはずもなかった。

 でも、

 「研二に好きって、もっと早く言えばよかったな」

 後悔することがあるのも確かで、

 「ゆり…」

 そしたら、もっと早くからこんな毎日送れてたのかな?

 「今俺といるのに、物足りないって?」
 「うん」
 「うんって、こういう時は、満ち足りてるわぁんって言うとこ」
 「研二はそういうくねくねしたような子が好きなの?」
 「まぁ、ある意味あってるかな。ゆりは、頭だけで考えてすぐ顔に出るから、表情くねくね変わるし」
 「くねくね変わるって表現気に食わない」
 「いいじゃないの、そこは。俺が好きなのは今までもコレからも、ゆりだけだし。
 生まれ変わっても、絶対ゆりだけだよ」

 生まれ変わってもなんて。

 「…ごちそうさま」

 嘘つき。
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