第2章 2nd
「けんじ?」
「そーみたい。」
抱きしめてくれた腕の感覚も、胸の感覚もわかるのに、心臓の音だけがない。
「なんで?」
「先に消えた俺の未練かなぁ?」
タバコの匂いだけがしない。
「…っ、夢?」
「夢じゃないんだなぁー、これが。」
「けんじが、いる、」
「うん、あー、顔にももう一回かけて」
ふしゅっ
「さんきゅっ、香水、結構減っちゃった?」
「ううん、まだある」
「そっか、ならまだいられるな」
「どういうこと?」
「んー?ひみつ。夢じゃないってわかるようにキスだけでもしとく?」
「ばっ、ばか!あんぽんたん!」
ポカポカと胸の辺りを叩いても、通り抜けない。
「はは、冗談冗談。そーいや、フルヤちゃんに迫られてたねぇ。ジェラっちまったよ。」
「見てたの?」
悲しくなって俯けば、顔を持ち上げられる。
「みてたよ、ずっと。7年間、ゆりのこと。」
…ちゅっ、
「そろそろ、長いキスできる様になった?」
「////」
「まぁ、俺だけだったもんね」
「わすれた!そんなの!短いのしか好きじゃない、息続かないもん」
「そういうとこ、可愛かったなぁ…けどまぁ、綺麗になったね。ずっと可愛いかったけど、大人のおねぇさんってかんじ。」
「研二くんは、…あの頃のままだね。」
ふぁさっと、髪を撫でる感覚。
「かっこいい時のままの俺で止まってるから、カッコつけられるっしょ?」
…そういうとこ、研二らしい。
「研二は、おじさんでもかっこいいよ、ぜったい。」
「んーっ、たまんないね、久しぶりに。」
「そうだ、いっぱいお話ししたいことあるの!すわって?あ、お酒飲める?」
悲しそうな顔した研二に、それもそうかと言葉をとめる。
「ゆりが呑んでよ、俺の代わりに。俺が介抱するからさ?」
「うんっ」
本当は研二と飲みたかったな。
「ささ、俺に注がせて。」
「ありがと、」
「どーいたしまして。」
なによりも幸せな時間。
「研二、すき。」
「えっ、//」
「言わないと、言えなくなるって身を持って知ったから」
「ごめん。」
「ううん、だってこうして会いに来てくれたもん。研二が入れてくれたお酒また飲めるなんて思わなかった」