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残り香     【DC】【萩原】

第2章 2nd


 目を閉じてセルフハグすれば、なんだかあの腕の温もりを感じる様で、だからまた悲しくて匂いが消えない様に、

 ふしゅっ、
 ふしゅ、

 濃い、残り香。

 恋?

 「なんて、ね。」

 ゆっくりと目を開けたとき、

 「え、」

 セルフハグしてる私の腕を、そっと引き剥がそうとしてる男が1人。

 「なんで、」

 こんなの、軽くホラーだ。

 「はは、夢?」

 こんなの、力が抜けて腕も下がる。

 「なんで、」

 そっか、お酒飲んだからだ…。
 口をぱくぱくさせてる、オモイビトがそこにいた。

 「そっか、声から忘れてくっていうから」

 なんとか、手を伸ばす。

 頬に触れようとしたとき、少しぴりっとして、だけどやっぱり空をきった。

 「趣味の悪いいじわる、今までこんなふうに出てきてくれなかったのに。」

 bourbonのおかげ?
 それとも、香水をふったから?

 「ばか、けんじ」

 バカは、私だ。

 ぽろっと自分でもわかるくらい、涙腺が緩んでしまって、そのせいで目の前でオロオロする研二は、ピエロみたい。

 「ふふ、」

 そっと、私の方に手が伸びて少しヒヤッとした気がしたけれど、気のせいだ。

 「研二の声、忘れちゃったよ、…全然会いに来てくれないから」

 もう一度会えたのに、

 もう一度触れたいって思う。

 もう一度声が聞きたいって思ってしまう。

 研二の顔、歪んでる。
 なんでそんなに泣きそうな顔するの?
 残されたのは、私なんだから。

 「研二、どうしたら、声聞ける?夢なのに、声も聞かせてくれないの?」

 すると、私から離れて香水を指差した研二。

 「ん?」

 今度は、自分の首の辺りを指差した。

 「…けんじに、かければいーの?」

 コクコクと、うなづいて、ニッコリと笑った。

 ふしゅっ、

 「…ッ、」

 喉を抑える。

 「痛いの?もう一回?」

 ふしゅっ

 「っっん、ん"っ、…おっけー。もう大丈夫だ。」
 「っ!!」
 「ねぇ、俺の手にもかけて?」

 言われるがままに、

 しゅっしゅっしゅ

 と、両腕にかける。

 「やだ、ゆりちゃんってばだいたーんっ」

 ぎゅーっと、腕の感覚。

 「あちゃー、胸にもかけてくれねぇと、通り抜けちまう。もっかいたのむわ。」

 ふしゅっふしゅっ
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