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残り香     【DC】【萩原】

第2章 2nd


 カートンで買っていたタバコは、たった一箱を残し、節約のために辞めた。

 …まぁ、今無職だし。

 仕事の引き継ぎやら何やらが終わって、使われることが無かった有給休暇で、仕事も1ヶ月も待たずにやめた。

 「ひまだぁー」

 あの日、ゼロに車を出してもらって、フぇブリーズとか必要なモノを買って、そして使わずに今に至る。

 「掃除するかぁ」


ーーーーー
ーーー



 …そうして重い腰を上げ、掃除を始めたのは今から約2、3時間前。

 茶色く染まっていた壁も、きれいに真っ白になった。

 部屋が少し明るくなった気がする。

 いつもは花の匂いのスプレーを買うんだけど、今回間違って無香料買っちゃったんだよなぁ。

 そこだけ萎える…。

 なんて思いながらフぇブリーズを振ると、あっという間にタバコの匂いが消えた。

 7年間、拗らせていたのに。

 「やめやめっ、違うこと考えよう。」

 ぶんぶんと首を振って、視線を上げると、棚に置いていたあの香水の瓶に太陽の光が一筋当たって見えた。

 「気化してるのかな、なんか、…少し減ってる?」

 容器の半分くらいになった中身、…いや、元々こんなものかと、手にとろうとしたとき、手が滑って床に落ちてしまった。

 「っ、…割れてないみたい。よかった」

 ことっと元の場所に置き直す。

 なんだかその後も、その瓶が気になってはいたんだけど、まだ掃除してない場所があるのを思い出し、考えるのを辞めた。

 1日をかけて、終えた衣替えで少し疲れた自分を癒そうと、飲んでいなかったウイスキーを開ける。

 ゼロにもらったものだ。

 よく考えたら、これ、bourbonだし…アピールだったんだろうか。

 …全く気づいてなかったけど。

 大きめの氷をグラスに入れて、少しトロトロとしたbourbonを注ぐ。

 「んま」

 結構高いお酒なのかな、すっごく飲み口いいや…、

 ぐびぐび

 「研二と飲みたいよぅ…」

 なんて口にしたとき、窓も開けてないのに一瞬カーテンが揺れた気がして。驚いたとき、カーテンの隙間からの月明かりが研二の香水の瓶に当たった。

 「けん、じ?」

 がんっ

 「いたっ、」

 テーブルに小指をぶつけながら、香水の瓶を手に取る。
 匂いだけでも、感じたかった。

 ふしゅっ、ふしゅっ、

 ふしゅっ、
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