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on Rouge

第1章 さようなら。


幻太郎side

『私、トリップしてきたんだと思います。』

「トリップ..即ち、異世界から来たということでしょうか?」

あくまでも冷静に答えはしたが、
いくら一目惚れの相手とはいえ、
受け入れるのに時間がかかりそうだ。

『信じられませんよね..』

ここで、そんなことないですと答えるのは簡単。
でも、彼女に中途半端な答えを出したくないというのが本心と考えた。
もっと材料を集める必要がある。

「さすがに、信じ難くはありますが、信じたいと思っています。
何やら証拠のようなものがあれば良いのですが..」

『証拠...ですか...トリップしたとしか説明がつかないんです...。』

歯切れの悪い返答に、何か問題があるのかと
答えを促す。

『何故なら、私はビルから飛び降りたのですから...』

「っ!?」

驚きのあまり、声が出なかった。
彼女に一体何が。
そこを追求したいのに、してはいけない気がして何も言えずにいると、彼女は話を続ける。

『新宿内にあるビルの屋上から。新宿にいるのならまだしも、シブヤに来てるなんてことがおかしいですし、それに..私は貴方のことを知っています。』

頭を切りかえ、
自分たちを知っていると言うことに疑問が浮かぶ。
そう聞くと、彼女の世界では自分たちを登場人物とした作品が存在するのだとか。

「なるほど。それは証拠になるでしょうね。
信用に足る、何かをご存知なのでしょう。」

『はい...たとえば...お兄さんがいる..とかでしょうか?』

「っ...」

彼女には驚かされてばかりだ。
気を使い、申し訳なさそうにする彼女に気にしなくて良いと伝え、
今後どうするのかと問いかけた。

まさか、また飛び降りようと考えているのではないかと、黙り込む彼女に不吉にもそう思ってしまった。

「また、死のうと思ってますか?」

『っ...』

彼女に一体何があったのだろうか。
泊めてくれ。とどこかの万年金欠太郎のように強請らない彼女。
好感を持つのは感覚的におかしいのかもしれない。
既に奴に感化されてしまっていることにため息がでそうになる。
そんなことはどうでもいい。
ただ、この運命のような出会いを手放すなんてことはしなくない。

「小生の家に来ませんか...?」

僕といることが生きる理由になれるようにと、ただただ願うばかりだ。
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