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on Rouge

第1章 さようなら。


彼女は目を覚ます。
周りを見回せば、
突拍子もなくどこかの公園で居るようだ。
倒れる形でそこに居たのなら、落ちた先がそこだと説明がつく。いや、つかない。
12階もあるビルの屋上から、飛び降りて無事であるはずがないと戸惑う。
それに倒れてるわけでもなく、あろうことかベンチに座っているのだ。
まるで、先程の出来事がなかったかのように。

『どういうことなの?』

彼女の呟く声は絶望に濡れていた。


幻太郎side

いつもの事ながら、身ぐるみを剥がされた帝統の服だけを買い戻しに行った。
当の本人は一緒に帰り、家に転がり込んでくると思いきや、
さっきまで「持つべきものはやっぱダチだな!!」と
厳禁なことをほざいてたくせに
割のいいバイトを見つけたとかで性懲りも無く
意気揚々と去っていったのだ。

「はぁ。まったく。」

溜息をつくくらい許して欲しい。

近くの公園を通り過ぎようとした時。
公園に不釣り合いな、鮮やかな赤に目が止まる。
否、目を奪われる。

「っ...。」

はっと息を飲む。
形容しがたいこの感情は、いったいなんなのか。
恋愛小説に度々目にする【一目惚れ】
ストンと胸の奥に落ちるその言葉。
どう付き合っていくのが正解なのか
皆目見当もつかない感情だ。

「綺麗だ...」

自然と零れた。
しかしながら、彼女の様子がおかしい。
酷く戸惑っているような様子に
このまま見つめているだけでは、
何も事は運ばないと意を消して声をかける。

「どうかされましたか?」

振り返った彼女は
息が詰まるほどに美しかった。


みやびside

声をかけられた方を振り向くと、
信じられない光景だった。
夢野幻太郎...どういうことだろう。
トリップ?まさか。いや、でも..
そうでないと説明がつかない。
私は新宿に居たはずだ。
彼がいるということは、渋谷..いや、シブヤなのか?

『ここって、どこですか?』

「ここはシブヤ・ディビジョンです。不思議なことを聞くんですね...。」

戸惑わせてしまって申し訳ないと思いながらも、
今後、自分はどうなるのだろう。と考えてしまった。
考え込む私を不思議に思ったのか、あの?と声がかかる。

『ごめんなさい。今後どうしようかと思いまして。』

「差し支え無ければ、何があったのか伺っても?」

真実を伝えようと、彼の目を見た。
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