第8章 丁度良い焼き加減だったらどんな味?
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少しずつ、暑さに混じって乾いた空気の気配が濃くなっていく。
タクマさんが帰ってから、二週間が過ぎていた。
週一の家庭教師のアルバイトをそのうちもう一件、増やそうと思う。
それぐらいなら夏休みが終わっても続けられるし、お小遣いとしても充分だ。
そんなことを考えながら帰宅までの道を歩いていた。
高くなった空には筋状の雲が伸びている。
私はまたなにか変化したのだと思う。
不安や怖さが通り過ぎて喜び。
飢えに似た寂しさと幸せは背中合わせに。
そして今の私は落ち着いている。
改めて、私は色んなものに守られていると感じた。
その中でもタクマさんの目に見えない腕が、いつも私を包んでいるようで。
心に写真集を作って、そんな自分を大事に仕舞っておきたい。
なにかを失いかける時があったなら、それがきっと私の未来を助けてくれそうな気がするから。