第7章 思えば私に対してもあんなだった
そんなことを考えていると、父が私の名を呼んでいたのに気付いて顔を上げた。
「風呂は一人で入れるか。 のぼせて溺れないか? 食欲や、吐き気はどうだ?」
そこまではひどくない。
週末を主に家でゆっくり過ごしていたお陰で、まだ微熱や多少のめまいはあるとはいえ、消化のいい食事ならもう摂れる。
「なんなら、拓真さんと一緒に入りなさいな」
「遠慮しときます」
タクマさんが、丁重にしかしきっばりとお断りした。
「そんなの、気にしなくていいのに。 ねえ?」
と、言われても。
ぽっと顔を赤らめる私と、微妙に視線を逸らし部屋の端を見やるタクマさんを見て、両親が、ん? と顔を見合わせる。
そして結構な間を置いたあとに、父が大袈裟目に長い息を吐いた。
「なんだ。 違うのか……今回のことはひょっとして、とも思ってたんだが。 ホッとしたような、ガッカリしたような」
「あらら……実は私もそう思っていたのよね……症状が似ていたし。 でも、今日は救急しかやっていなかったものだから。 あとから検査薬を渡そうかと用意してたのに」
「しかし……別荘でもせっかく気を使ったのだがなあ」
「案外と古風なのねえ」
まあ、この子は。 昔から貧血の気もあるからね。
ハラリとテーブルに放られた診断書。
父の、私に対する心配レベルがガクっと下がったようだ。
どうやら明後日の方に盛大に勘違いしてたらしい親のことは放っておいて、早々に私たちはそこをおいとますることにした。
「ところで拓真くん。 少し話があるんだが」
父に呼び止められた彼がそちらの方向にまた戻っていく。
なんだろう? 思いつつも、呼ばれてない私は念のため、手摺につかまりながら階段を登り自室へ向かった。