第6章 気になる彼の形と私の色
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家から車で約15分。
父の事務所の産業医の人から診断書を作成してもらい、そのあと母とタクマさん、私の三人は土曜診療をしている総合病院へと向かった。
「診断書と問診の通り、免疫力が全体的に落ちているようです」
お医者さんの説明によるとなんでも、白血球や血液中に元々含まれている免疫抗体が、普通の三分の一以下しかないとか。
「栄養や睡眠不足を避けてくれぐれも安静に。 生理不順もあるようですけど、気を付けないとますます悪化して、不妊の原因にもなりますよ」
それから漢方薬を処方され一週間様子を見るのでまた来るように、と言われた。
「とりあえず少しは安心していいのかしらね?……でも、お昼のアルバイトは控えなさいね?」
そう帰りの車内で母に言われたけど、確かに長時間の立ち仕事は今は止めた方がいいかもしれない。
お店の人にも迷惑をかけてしまったし。
「……はい」
「家庭教師も、こうなったら大人同士の話になると思うから」
……そうなるような気がしていたのだけど、私としてはなんだか、ここで辞めるのは時期尚早な気がしていた。
それでそのことを、今朝がたタクマさんに相談をした。
私の話をじっと聞いていたタクマさんはそのあとに「分かった」とひと言だけ、私に言ったのだ。
「ああ、それ」
車のバックミラー越しに後部座席の母に向かってタクマさんが呼びかける。
「明日一度、綾乃とオレがその家に行ってみます」
「え、まあ……? でもそれは」
「それで駄目だったら大学の派遣先と、双方の親の間の解決ってことで。 今朝綾乃の話聞いてたら、今のバイト自体は嫌じゃなさそうなんで。 体力的にも短時間の家庭教師なら、無理はないと思いますし」