第6章 気になる彼の形と私の色
「ソファの方が、楽じゃないかしら……でも、懐かしいわよね。 私も昔はよくああやって」
いつもの朝食にしては所狭しと並べられるお皿たちがテーブルに乗り切れずに、ソファのローテーブルにまで進出している。
両親のタクマさんに対する歓迎ぶりが分かるというものだろう。
「そうか? 今も佐和子さんを寝室に運ぶ時は、いつもそうしてるだろう」
「裕之さんったら……」
頬に手を当ててぽっと顔を赤らめる佐和子に対し、愛おしげに目を細める裕之。
そんな両親からあえて視線を外しタクマさんが私を抱えソファへと移動する。
「ふふ。 昨晩もね」
覚束なくネギを刻む母を見詰めたあと、父が微笑みながらテーブルの上の動画のニュースに目を落とす。
「……アレとオレを一緒にすんなよ」
「分かったよ……ごめんね。 朝から変な昼ドラ見せて」
「平和な分、昼ドラよりゃマシだけどな」
ダイニングテーブルを背に、並んでソファに腰掛けている私たちがこそこそと言葉を交わし合う。
仲良きことは美しきかな。
そうはいっても。
これを見慣れてる私でさえ、たまに食傷するぐらいたから、素人にはさぞキツいだろう。
なるべく姿勢を低くして、タクマさんが空中に乱舞するハートマークを避けていた。