第6章 気になる彼の形と私の色
これは、昨晩に引き続き、思いっ切り甘やかしてくれるということだろうか。
でもこんな彼につけ込む真似なんか、彼女として、いや人としてどうなんだろう?
「無理すんなよ。 オレにやれることあんなら」
そんなタクマさんの、私を気遣う表情にチクリと胸が痛む。
痛むのだけど。
「なんか、た、立てない……みたい?」
しばらくと心の中で攻防を繰り返してた私の中の悪魔が、良心をポイッとゴミ箱に捨てた。
「……オマエ、具合悪ぃクセに、なんでそんな嬉しそうな顔してんだよ」
「し、してないよ」
「でもま、体も熱いし顔も赤いからな」微妙な表情で私を抱き上げているタクマさんが階段を降りている。
祝。初めてのお姫様抱っこ。
こんな日が来るなんて思わなかった。
じーんと胸に去来する感慨深さに、涙ぐみそうになる。
「少し痩せたか。 こないだより」
そう言ってため息をつくタクマさん。
そういえば、以前も私の意識のない時に別荘で運んでもらったのだと思い出した。
……気付かないうちにも私って色々甘えてるんだなあ。
「あの、もう大丈夫かも…です」
「これぐらい遠慮すんな」
キッチンに踏み入ると、ダイニングテーブルに備え付けの椅子に座っていたジョギング帰りの父が顔を上げた。
「拓真くん、悪いね。 本来は私が仕事を休」
「綾乃にはお粥を……あら」
抱っこしてた私を椅子に下ろし、その様子を注視している両親に気付いてタクマさんが説明した。
「ああ、フラついて危ないんで。 ここでいいか?」