第6章 気になる彼の形と私の色
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翌日の朝は、最近のうちではスッキリと目覚めた方だった。
私を起こしに来た母が、タクマさんには階下の客室を使ってもらってると言う。
「朝早くから、近所に散歩に行ってくるって出てるみたい。 きちんとお布団も綺麗に畳んで。 まだ若いのに、市役所の役付だとか。 しっかりしてるのねえ」
むむ。 私が起こしてあげたかったのに。
だけど床に足を着けると、意外に体が重く感じた。
「昨晩もだけど、まだ微熱があるようね。 土曜もやってる病院って、限られるのよねえ」
私のおでこに手を当て困り顔の母の後ろから、タクマさんが戸口にひょいと顔を出してきた。
「オレ運転して病院連れて行きます。 よければ」
タクマさんは軽く日用品などの買い出しに出掛けていたようだ。
近所の大型スーパーの袋を抱えている。
何の用意もなしにうちに滞在することになったのだから、色々入り用になったのかもしれない。
「まあ……私が運転出来ないから、有難いわ本当に。 それなら早速朝食を……あっ、お鍋が!!」
「味噌汁の鍋なら火、消しときましたけど」
「まあまあ……何から何まで」
母もすっかりタクマさんに感じ入った様子で、じゃあ、あとでね! と機嫌よく階段を降りていった。
「タクマさん昨晩から色々ありがとう。 おはよう、早起きしたの? 枕が変わって眠れなかったりしなかった?」
「まあ……別に」
いつもにも増してぶっきらぼうな彼だが、機嫌が悪いというわけでは無いらしい。
「……でも熱って、フラつくんじゃね? 一緒に階下行くんなら肩貸すか?」
「あ……あり」
それどころか今朝も彼は優しい。