第6章 気になる彼の形と私の色
しばらくの間何も言わずにそうしていて、心臓の音が治まると共にふ…と、私の体から余分な力が抜ける。
「……でも、そしたら、私はタクマさんになにを返せばいいかな? 私の役割は?」
気持ちが落ち着いたせいもあり、直接彼の顔を見ていないからか、今度はきちんと話せた。
私の手の甲をゆっくり撫でてる親指が視界に入る。
とても大事にされてる気がした。
「……たとえば、この家とか」
「え?」
「あそこの別荘とか。 不思議に、居心地いいんだよな。 オマエとか、オマエの家族みたいに。 オレはそんなの慣れてねえから。 だから、そんな時間を過ごせることに感謝してる」
なんの労力も使ってない、そんなことが彼とイーブンになるんだろうか。
そう思ったけど、もしかしたらそれはタクマさんからすれば、私の思っていた、ご飯を作って彼を待ってることと似ているのかもしれない。
そんな彼はとても謙虚な人だと思った。
……そして、こんな穏やかで満ち足りてる時を過ごしているのに、何を考え付くんだろうと自分でも呆れる。
「あの、もう一個お願いしたいのですけど」
「何でもどうぞ」
呆れるのだけども、やっぱりこんなにくっ付いてると。
「触っ…てもいいかな?」
「ん?」
「タクマさんは触ったけど、そしたら、私も触りたいなって」
顔を見れないことに感謝した。
とりあえずタクマさんが何でも言う事をきいてくれそうな、この機会を逃す手はない。
「……この状況でか」
「駄目……かな?」
この状況とは私の実家という意味だろうか。
でもおそらく、私の親も今まだ二人の世界にいるのだろうし。