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朝凪のくちづけ【R18】

第6章 気になる彼の形と私の色



しばらくの間何も言わずにそうしていて、心臓の音が治まると共にふ…と、私の体から余分な力が抜ける。



「……でも、そしたら、私はタクマさんになにを返せばいいかな? 私の役割は?」



気持ちが落ち着いたせいもあり、直接彼の顔を見ていないからか、今度はきちんと話せた。

私の手の甲をゆっくり撫でてる親指が視界に入る。

とても大事にされてる気がした。



「……たとえば、この家とか」


「え?」


「あそこの別荘とか。 不思議に、居心地いいんだよな。 オマエとか、オマエの家族みたいに。 オレはそんなの慣れてねえから。 だから、そんな時間を過ごせることに感謝してる」



なんの労力も使ってない、そんなことが彼とイーブンになるんだろうか。
そう思ったけど、もしかしたらそれはタクマさんからすれば、私の思っていた、ご飯を作って彼を待ってることと似ているのかもしれない。

そんな彼はとても謙虚な人だと思った。

……そして、こんな穏やかで満ち足りてる時を過ごしているのに、何を考え付くんだろうと自分でも呆れる。



「あの、もう一個お願いしたいのですけど」


「何でもどうぞ」



呆れるのだけども、やっぱりこんなにくっ付いてると。



「触っ…てもいいかな?」


「ん?」


「タクマさんは触ったけど、そしたら、私も触りたいなって」



顔を見れないことに感謝した。
とりあえずタクマさんが何でも言う事をきいてくれそうな、この機会を逃す手はない。



「……この状況でか」


「駄目……かな?」



この状況とは私の実家という意味だろうか。
でもおそらく、私の親も今まだ二人の世界にいるのだろうし。



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